大隅半島
鹿児島の頼れる専門業者が仕上げる絶品かば焼き
大田さんが大きく肉厚に育てた「黒潮うなぎ」。その加工はすべて鹿児島の加工業者「鯉家」さんにお願いしているそう。入荷するうなぎごとの特徴やそれぞれの出荷先の好みなどに合わせて、微調整しながら加工をしている鯉家さんの加工現場に、武田さんが訪れました。
大田さんが信頼を寄せる「鯉家」さんのうなぎ加工現場に潜入
「加工にもプロならではの技術やこだわりが細かくあり、想像以上の細やかさでした。そしてうなぎに合わせて微調整をすることで、大切に育てたうなぎの魅力がさらに発揮できるような加工がされているそうです」と驚く、武田さん。加工について見せていただきながら、「鯉家」代表取締役・福元さんに細かくお話を伺いました。
肝心要の「割き」は、先代の腕が光ります
氷〆と電気〆のダブルで鮮度を保ちます 先代をはじめ職人たちによる熟練の技 武田さんも見とれる早業が繰り出されます 「黒潮うなぎ」は“頭割き”にします
武田さん:今日はよろしくお願いします。当たり前ですがすべて手作業ですもんね。そして皆さんとても早い!
福元さん:うなぎによって微調整が必要なので必ずすべて手作業ですし、分担もそれぞれ何年も担当している職人ばかり。単純な作業に見えて、細かくずっと気を張っているんですよ。
武田さん:うなぎをスーッと開くので一見簡単に見えてしまいますが、これも本当に難しいはずです。あまりに素早いので、割かれた後にまだ動いているうなぎまでいて驚きました。
福元さん:関東は背開き、関西は腹開きと出荷先によって変わります。「黒潮うなぎ」は大きくて肉厚なため美しく開くのが特に難しいので、“頭割き”という他とはまた少し違う開き方にしています。
職人たちが肝や血合いなど、焼いたときに雑味になるようなものを丁寧に省く きれいになったうなぎの身が並べられていく 骨に残っている身はほんのわずか
武田さん:これも当たり前ですが、一匹ずつ丁寧に下処理をするんですね。すごい作業……それなのに本当に早くて驚かされます。
福元さん:もちろんです。出荷いただいてから加工をいかに早く進めるかで鮮度が変わってしまいます。細やかでありながらスピード勝負でもあるんです。
武田さん:大胆でデリケートな作業なんですね!
福元さん:養殖業者の方々と直接やりとりをさせてもらっているので、彼らがいかに大変な思いをしてうなぎを育ててきたのかをよくわかっています。それを最大限美味しく加工することも大事ですし、無駄にしないことも同じくらい重要だと思っています。毎日向き合っているので、スタッフそれぞれのうなぎへの愛情も強いですしね!
職人の手で火入れを微調整しながら焼かれていく白焼き、かば焼き
オリジナルの焼き台でじっくり火入れ 武田さん、見すぎ見すぎ! 感嘆の声が漏れています 備長炭とオガ炭をブレンドして微調整しつつ使用 「やっぱり備長炭は断然香りが違います!」と代表取締役の福元さん
武田さん:焼き場担当の方の動きをずっと拝見していましたが、うなぎによって焼き方を調整するために、返すタイミングや置く場所を変えたりしていて、またそれもとてもスピーディ。焼き台の機械、炭のブレンドは鯉家さんオリジナルなんですよね?
福元さん:そうです。焼き場は試行錯誤の末、今がベストの状態となっています。これは他にはない独自開発の焼き台で、備長炭とオガ炭をブレンドして使用するなどこだわっています。火入れはとても重要な工程ですから。
白焼きがふっくら焼けました 箸でつまんだ感じがもう違います。「ふわふわ‼」 食べた瞬間満足の笑顔が広がる武田さん
武田さん:かば焼きが大好きなのですが、白焼きも美味しい‼ 今日で目覚めてしまった気がします(笑)。身が厚く、ふわふわで味が濃い。ほんのちょっとの塩で十分ですね。
福元さん:うなぎは白焼きよりも圧倒的にかば焼きのイメージがありますが、特に「黒潮うなぎ」のように肉厚なうなぎは少しの塩で十分。脂を落としすぎないよう焼き場で丁寧に焼いているのでふわふわに仕上がります。
うなぎといえば、やっぱりかば焼き! たれの香りがたまりません※個人の感想です
丁寧にたれづけしていきます 秘伝のたれは一度凍らせてから使います 武田さん! 見すぎ見すぎ! かば焼きの厚みに驚く武田さん
武田さん:白焼きもとても美味しかったですが、やっぱりかば焼きが気になります。秘伝のたれがポイントだとお聞きしました。いい香り!
福元さん:たれについては秘伝なのでもちろん秘密ですが(笑)、たれ漬けしてから焼くことにもまた難しさはあります。もちろん焦げやすくなりますから。そこはもう焼き場のプロにおまかせ。この甘いたれはご飯がすすみますよね。
黒潮うなぎのかば焼きが完成しました おいしそう~! いただきます!
福元さん:白焼きで「黒潮うなぎ」の肉厚さや味の濃さは分かったと思うのですが、かば焼きにしたときの味も体感してみてください。
武田さん:いただきます。美味しい‼ たれがついているので白焼きほどふわふわしていませんが、肉厚さのおかげで食べ応え満点です。備長炭によってついた焼き目がまた香ばしいですね。
武田さん:養殖の苦労をお聞きして、加工現場の細やかな作業を拝見したので、うなぎが高価になる理由がよくわかりました。そして、うなぎといえばかば焼きで、たれの味が美味しさの決め手!なんて思ったりしていましたが……大変失礼しました。うなぎそのものにしっかり脂が乗っていて甘みがあるんですね。
福元さん:すべてのうなぎがそうなのではなく、「黒潮うなぎ」などのしっかりと大事に育てられたうなぎに当てはまる特徴です。同じように見えてうなぎはそれぞれ個性豊か。その個性を生かしながらより美味しく仕上げる加工を心かげています。
武田さん:うなぎは特別な日に食べるものというイメージでしたが、こんなに丁寧につくられたうなぎが家庭でも食べられるなんてとても嬉しいです!
株式会社鯉家
鹿児島県鹿屋市白崎町14-22 TEL0994-41-4283
営業時間9:00~15:00 定休日 土曜、日曜、祝日
※人気の「大トロうなぎ」は、かば焼き/白焼き、長焼き、ハーフカット、きざみなどをラインナップ(長焼きはサイズを選べます)。こちらの商品は黒潮うなぎではありません。
【番外編】大田さんが、養殖の合間に作り始めた「夢の塩」は今や人気商品
串間市の人気商品「夢の塩」シリーズ 日々、大田さんが黙々と作業を 養殖場と同じ敷地内のおしゃれな小屋で塩づくり
試行錯誤の10年を経て、ひらめやうなぎの養殖が落ち着いてきたころ、同時に塩作りも始めたという大田さん。都井岬の沖合い100mから海水を汲み上げて窯炊きしてつくった塩はあっという間に話題に。
小屋の中には大きな塩釜が3台。 ミネラル分たっぷりな湯気にご満悦な武田さん できたばかりの山盛りの塩 ざるにあげて乾燥させます できたての塩はキラキラしていて美味しそう
海水を一次窯で薪によって炊くこと1週間。“かん水”ができあがります。この方法は自然蒸発に近いので、ミネラル分がとても豊富。その後、不純物を取り除く作業を行いながら、10分の1ほどの量までさらに煮詰めていきます。二次窯を使うのは、風があまり強くない日。火加減を微調整しながら焦らずじっくりと炊いていくことで、他にはない塩ができあがるのです。
作業場を覗いた武田さんもできあがったばかりの塩を見て「塩ってきれいなんですね」と大興奮。できたての塩を味見させてもらいました。「都井岬の海水を、昔ながらの釜炊きという製造方法で作っているので、他にはない旨味があるんです」と、塩づくり5年目に入った大田さんも胸を張ります。
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※価格などの情報は取材時のものです。
撮影/久保田育男 取材・文/柿本真希