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〝生乳を廃棄したくない〟ロスを無くすための試行錯誤からうまれた、SDGsな商品づくり

ミルクジャムやバター、ミルクピスのほかにも、ミルク工房そらにはたくさんの乳製品が並びます。牛乳、ヨーグルト、プリン、数種類のナチュラルチーズ、前記事でもご紹介したソフトクリームやジェラート、さらにダックワースやクッキーなどの焼き菓子まで、少人数かつ手作業で作っているとは思えないほどの幅広い展開です。この豊富なラインナップのわけは、「ジャージー牛乳を一滴たりとも無駄にしない」という、ミルク工房そらの哲学にありました。

生乳を無駄にしない。そのために必要だった〝保存できる商品づくり〟がすべての始まり

ジャージー牛の鳴き声が響くのどかな牧場前の広場で、JALふるさと応援隊の京都府担当・小島さんが、丹後ジャージー牧場の専務・平林学さんにインタビュー。夏の太陽よりも熱い生産者の生の声を聞くことができました。

PROFILE

平林学さん

丹後ジャージー牧場・専務。大学卒業後は、実家の丹後ジャージー牧場には入社せず、大阪でアパレルの会社に就職した。イタリアのサルデーニャ島に訪れた際に、海外のローカル文化に触れ、生き生きとした人々の生活に感銘を受けて地元・久美浜町に戻ることを決意。27歳から丹後ジャージー牧場で働き始めた。以降、地域の農家やシェフなどと交流を深め、食を通して丹後のローカル文化を誇れる取り組みをつづけている。

▼ミルクジャムから商品づくりがスタート

小島さん:2004年にミルク工房そらが設立されて、その初期に作られた商品がミルクジャムとうかがいました。

平林さん:ミルクジャムは、2代目である両親がここを立ち上げたときから作ろうと心に決めていた商品なんです。「ジャージー牛乳100%のミルクジャムの美味しさを、多くの人に知ってもらいたい!」という想いを込めて作ったのだと聞きました。

小島さん:私自身、いただいたときは「こんなにミルクを強く感じることができるジャムがあるなんて」と驚きました。香りも華やかで、高級感があります!

平林さん:そう言っていただけると両親も喜ぶと思います。いまでも開発当初から製法を変えずに、牛乳と生クリームと砂糖を6時間じっくり煮込んで、丹精込めて作っているんですよ。

小島さん:ミルク工房そらの商品についてですが、ものすごくたくさんの種類を作っていらっしゃいますよね。商品開発をする上で大切にしていることはどんなことですか?

平林さん:「牛乳を美味しくいただいてほしい」というのは大前提として「生乳を無駄にしない」というのも大事なコンセプトになっています。私たちは日々、牛を家族のように思いながら大切に育てています。その彼女たちが頑張って生み出してくれている牛乳をいただいて、私たちは商品を作らせてもらっているんです。だからこそ、その一滴を大切にしたい。

小島さん:すごく牛想いな酪農家さんなんですね。そのうち、言葉がなくても気持ちがわかるようになりそうですね。

平林さん:一緒に過ごしているとわかることがたくさんあります。「今日はこの牛、機嫌が悪いな」とか(笑)。集団行動が苦手な牛がいたり、餌を横取りする牛がいたり、意地悪する牛がいたりでみんな個性豊かなんです。

小島さん:人間と同じでいろいろな性格の牛たちがいるんですね〜。

▼生乳から生クリーム、生クリームから様々な商品が誕生

平林さん:丹後ジャージー牧場のオープン当初から、私たちは牛乳だけでなく生クリームの製造もしていました。生乳からとった生クリームは、ミルクジャムやバター、ジェラートやプリンなどに使っています

平林さん:暑くなる季節を除いて、毎月数量限定のクッキー缶も販売しているのですが、その商品にたっぷり使われているのも、生クリームから作った自家製バターです。牛乳のままではすぐに悪くなってしまい、どうしてもロスが生じてしまうのですが、加工品にすることで長期間保存ができる。乳製品を作り始めたのは、こうした狙いもあります。

小島さん:生クリームがこんなにいろいろな商品に形を変えるんですね。お聞きすると無駄なく牛乳を使えているように思うのですが?

平林さん:問題は、生クリームを抽出した後に残る脱脂乳なんです。乳脂肪分の高さが自慢のジャージー牛なのに、その脂肪分が低くなってしまうと、よそに出すのは難しくなってしまいます。そこで、開発されたのがミルクピスなんですよ。

小島さん:なるほど。ミルクピスは、脱脂乳に乳酸菌と砂糖を加えて作るとおっしゃっていましたね。

平林さん:おもしろいことに、牛乳を無駄にしない商品づくりを始めると、週の作業ルーティーンが自然と固まってくるんですよ。土曜日に生クリームを作ると脱脂乳が出てくるので、日曜日ミルクピスを作らなければいけない、という感じにですね。

▼あらゆる副産物を、捨てずに循環させていく

小島さん:脱脂乳以外に、牛乳からできる副産物で商品に利用しているものはありますか?

黄色い液体が乳清(ホエイ)

平林さん:チーズを作る際に、酸などで固めているとカゼインというたんぱく質と乳清(ホエイ)に分離していきます。カゼインはチーズになるのですが、乳清の行き場がなくなってしまう。そこで、フルーツ系のジェラートに混ぜて提供する方法を考え出しました。口当たりが少しだけまろやかになるんですよ。ただ、ジェラートに乳清を入れているのは、美味しくするためという以上に乳清も無駄にしたくないという想いの方が強いですね。

小島さん:「一滴も牛乳を無駄にしない」というだけに徹底されています。そうした取り組みがきっかけで、バラエティ豊かな商品の数々が誕生したんですね。SDGsの先駆けと言えるかもしれません。

平林さん:私たちにとっては、牛乳を中心とした循環のなかでおこなわれている、ごく自然なことなんですけどね。循環といえば、牛を飼育する際に出る糞も堆肥に変えて有効利用しています。お客様への販売もしていますし、有機栽培農家がうちの堆肥を使ってくれることで、農家さんとの繋がりが生まれるんです。そのご縁でジェラートに使う新たな食材が手に入ることもあるんですよ。

小島さん:牧場内の循環だけではなく、地域とのネットワークにもなっているんですね。

平林さん:丹後ジャージー牧場としての今後の目標は、自社の規模を大きくするのではなく、地域の農家やシェフ、デザイナーやカメラマン、メディアにも繋がりを広げて、丹後ローカルの魅力をしっかりと発信していくこと。消費者の方々が、〝この地域のものを食べると情景が浮かぶ〟という商品を作っていきたいです。

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イートインで大人気のジェラートは地産地消 地元で採れる旬の農産物が限定フレーバーに

ジャージー牛乳は乳脂肪分が高いので、バターだけでなくアイスにも相性ばっちり。ミルクジェラートをベースに、季節の食材などを混ぜたオリジナルのジェラートを常時10~15種類ほど作っています。近隣の農家で採れる食材を使った季節限定商品として、夏にはメロンや桃秋にはいちじく、栗、さつまいものフレーバーが登場。牧場内で育つ作物を取り入れることもあるのだとか。冬には酒粕を使ったフレーバーも人気があるそうです。

―ジェラートの製造工程を見学させていただきました

多種多様なジェラートは、ベースとなるミルクジェラートの製造に始まります。ジャージー牛乳、生クリーム、砂糖を入れ、攪拌機でミックス。このとき、80度まで温度を上げて殺菌作業も並行しておこなっています。そうして作ったジェラートの“もと”を冷却器に投入し、15分ほど冷やせば完成です。ジェラート製造のポイントは、生クリームを加えるところ。

「ジェラートのような冷凍商品は、その冷たさで甘みを感じにくくなっています。そのため、生クリームを入れて濃厚に仕上げることで甘みを演出しているんです」(平林さん)

さっそく、小島さんがミルクジェラートを試食。出来立ての商品は、空気に触れていないため酸化しておらず、ひと味違うそうです。

とってもフレッシュで、ソフトクリームのように滑らかな舌触りをしています。しばらく置いたものよりもさらに風味が立っていて、ミルクの味が濃く感じますね!」(小島さん)

      

~夏の限定ジェラート・メロンには、丹後半島が誇る〝幻のメロン〟「新芳露」が使われます~

夏の一時期にしか食べられない人気ジェラート・メロンに使われているのは「新芳露メロン」です。このメロンは、栽培が難しいことに加え、収穫期間が1週間しかなく、かつ追熟が通常のメロンよりも非常に早いため、市場にほとんど出回らない、まさに〝幻のメロン〟。その香り高さはジェラートにしても損なわれることなく、口どけの良い優しい甘さが特徴です。

ジェラートに使っている新芳露メロンを作るのは、丹後ジャージー牧場から車で5分ほど、同じく久美浜町にある「的場農場」。小島さんが直売所に入ると、辺り一面に丸々としたメロンが並んでいました。代表の的場良一さんによると、久美浜は土壌、水、環境に恵まれていて、メロン栽培に向いた土地なのだといいます。

「農場は日本海に面した砂丘畑にあり、ミネラルの多い土壌と豊富な地下水によって美味しいメロンが育ちます。なかでも、ウチは化学肥料や農薬に頼らない自然農法を大切にしています。そういうものに頼れば安定して栽培はできるかもしれませんが、植物自体の生命力が弱くなってしまう。自然の力を十分に活かして作るからこそ、甘くて美味しいメロンになるんです」(代表・的場さん)

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職人が一つ一つ手作業で作るこだわりのチーズは、形を変えて週末限定の人気メニューへ

チーズも、ミルク工房そらの人気商品のひとつ。モッツァレラ、ゴーダ、ストリング、カッチェカバロなど、さまざまな商品を製造販売しています。搾りたての牛乳で作るチーズはフレッシュで、風味豊かに仕上がります。平林さんが是非ともオススメしたいというのが、オリジナルチーズ「フロマージュ デュ くみはま」

「チーズを作り始めたのは、約15年前。母が中心となって、モッツァレラやゴーダなどのチーズを開発してきました。ただ、それらの商品は日本全国で広く作られているものなので、独自性という面ではちょっと弱かったんですよ。『ジャージー牛乳の魅力を存分に伝えられるチーズとは何か』『久美浜町でしか食べられないチーズとは何か』と模索する母が出会ったのが、フランスの「サンフェリシアン」でした。サンフェリシアンは、酵母菌と乳酸菌で発酵させたもので、村のお母さんが鍋を煮詰めて作る家庭のチーズ。乳脂肪分の高い生乳で作られるということもあり、母にはぴったりでした。2年の歳月をかけてこのチーズを研究し、久美浜町の環境にあった作り方を確立させて、ようやくできたのが『フロマージュ デュ くみはま』です」

作りたての“くみはま”は、弾力がありもっちり。冷蔵庫に入れて熟成が進むと、スプーンですくえるほどクリーミーになります。硬めのパンをスライスして、そこにトロトロのくみはまをかけると絶品のチーズパンが味わえます。

     

―職人のチーズ作りを見学させていただきました

取材に訪れた日は、“さけるチーズ”としても有名なストリングチーズの仕込みの真っ最中。その製造工程を小島さんが見学させていただきました。

ナチュラルチーズは通常、生乳に乳酸菌や酵素を加えて固めることで作られます。見学させていただいたのは、乳酸菌を加えた生乳を酸で凝固させている段階。この過程で、乳清(ホエイ)が染み出してきます。この乳清をしっかりと取り除かないとチーズに苦味が出てしまうそう。酸につけて固められたチーズは、この後どうなるのでしょうか。

「固めたチーズは一晩寝かせてから、手で練って伸ばしていきます。パスタフィラータ製法というのですが、こうして伸ばしていくことで、チーズのなかに繊維を作っていくんです。最後に一本の長いチーズにしたらぶつ切りにして乾燥庫へ。一週間程度かけて、じっくり水分を抜いたら完成です」(平林さん)

     

週末限定ランチで提供されるピザも人気メニュー

ジャージー牛乳のチーズをたっぷり使用したピザもまた、ミルク工房そらの人気商品です。冷凍商品として販売されているのは、モッツァレラチーズをのせた「マルゲリータ」と、モッツァレラとリコッタチーズを使った「リコッタ・ロッソ」の2種類。カフェでは週末のランチ限定で、毎週6種類ほどの焼きたてピザを堪能できます。店内には本場・イタリア製の石窯が設置されており、ピザが焼きあがるまでの時間も香ばしい匂いで楽しませてくれますよ。

丹後産の米粉を加えた生地はパリッともっちり!驚くほどしっかり伸びるチーズの組み合わせが絶品で、このピザ目当てに訪れるリピーターも多いのだとか。ピザは家庭でも味わいたいという要望から、通販や冷凍テイクアウトでも販売されています。「レンジで温めるだけなのに、お店で食べるような出来立ての味が楽しめる」と評判です。

     

◆丹後ジャージー牧場「ミルク工房そら」

住所:京都府京丹後市久美浜町神崎411
TEL:0772-83-1617
営業時間:10:00~17:00
 ※薪窯ピッツァランチは、土・日・祝日11:00~16:00限定(L.O.15:30)
定休日:木曜日
 ※祝日の場合や、夏休み期間(7月後半~8月)は木曜日も営業
 ※詳しい営業日程はSNSをご確認ください
公式HP:https://www.tango-jersey.co.jp/
公式Instagram:https://www.instagram.com/milkthesora/
公式Facebook:https://www.facebook.com/TangoJerseyFarm

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プレゼントキャンペーン開催中!

「ジャージーミルクピス&ミルクジャム」をセットで3名様にプレゼント。下記応募要項をご覧いただき、ふるってご応募ください。

応募要項はこちら

※価格などの情報は取材時のものです。

撮影/内藤貞保 取材・文/小石原悠介

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