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スペシャル記事

五木ひろしさん×宮崎由加さん
“北陸”クロストーク~北陸に息づく「日本の原風景と食文化」~

福井県美浜町出身の五木ひろしさんと、石川県かほく市出身の宮崎由加さん。おふたりの地元には、敦賀半島、能登半島という日本有数の半島があります。北陸地方を代表する土地で育ったおふたりに、それぞれの県の魅力や、北陸ならではの食文化について語り合っていただきました。

  • 五木ひろしさん PROFILE
    1948年生まれ。福井県美浜町出身。‘64年、歌手デビュー。’71年に発表した「よこはま・たそがれ」の大ヒットで、ミリオンセラー歌手となる。NHK紅白歌合戦50回連続出場の他、日本レコード大賞“大賞”受賞など、数々の賞に輝く。紫綬褒章、朝日小綬章受賞。新曲「北前船/港町恋唄」は半島に縁の深い歌。
  • 宮崎由加さん PROFILE
    1994年生まれ。石川県・能登半島出身。タレント。2013年、Juice=Juiceのリーダーに就任。’19年、Juice=Juiceを卒業後、テレビやラジオなどで幅広く活動。現在、テレビ番組「うたなび!」で半島特集コーナーを担当。「ペニンシュラ応援特使」「いしかわ観光特使」「かほく市ふるさと大使」でもある。

北陸の魅力は、豊かな自然と住みやすさですね(五木さん)

五木ひろしさん(以下、五木さん):石川、福井、富山の3県は、“北陸3県”としてひとまとめに語られることも多いですが、僕たち地元の人間からすれば、石川と福井ではかなり個性が違いますよね。

宮崎由加さん(以下、宮崎さん):私は10代の頃に上京してきてよくわからないのですが、たとえばどんなところが違うのでしょう?

五木さん:石川県には城下町として栄えた金沢がありますから。金沢にはいまも花柳界が残っているし、兼六園や金沢21世紀美術館といった観光名所も賑わっていて、小京都と呼ばれるような、明るく華やかな空気が漂っているでしょう。

宮崎さん:確かに石川は、きらびやかなものが好きな方が多いですね。華麗な加賀友禅や、蒔絵を施した金沢漆器も有名ですし。金箔の生産量が日本一なので、大きな金箔を惜しげもなく張り付けたソフトクリームもあるほどです。

五木さん:一方、福井の人間は地道で研究熱心。前田利家の時代から受け継がれてきた伝統文化を今も大切にして長い歴史を誇る繊維産業や、最近では鯖江の眼鏡フレームなど、国内でも名だたる産業がいくつもあります。だけど、それを積極的にアピールすることはない。ある意味、奥ゆかしい県民性なんですよ。

宮崎さん:同じ石川県でも私が生まれ育ったかほく市は能登半島の玄関口ですから、金沢のような都会とは違い、川辺に蛍が飛んでいるような、豊かな自然に囲まれた場所なんです。少し足を延ばして半島の先まで行くと、棚田が連なる白米千枚田があったり。金沢と能登半島を結ぶ「のと里山海道」をドライブすると、七尾湾能登島が一望できる素晴らしい景色が楽しめます。海沿いに、和倉温泉もありますし。

五木さん:僕が育った福井の美浜町にも、水晶浜というとてもきれいな浜がありますね。キラキラ光る真っ白な砂浜が続き、海の水が水晶のように澄んでいる。越前の緑豊かな山々も素晴らしい。美しい海と豊かな自然に囲まれている福井は、実は「住みやすい県」№1なんですよ。

宮崎さん:そして、その第2位は石川県。子供のころを振り返っても、石川は本当に住みやすいところだと実感しています。

五木さん「富」の石川に「知」の福井。土地柄はそれぞれ違っても、美しい自然と住みやすさはどちらも同じ。それが北陸という地域の大きな魅力なのだと思います。

故郷のソウルフードは「ソースカツ丼」(五木さん)、「8番らーめん」(宮崎さん)

宮崎さん美味しいものがたくさんあるという点でも、石川と福井は共通していますよね。

五木さん:そう、福井は水が美味しくて米どころ。コシヒカリの発祥地はもともと福井だったんだけど、奥ゆかしい県民性から新潟に譲ってしまって。でも、その代わりに新しく開発された「いちほまれ」というお米がこれまた美味い。炊き上げた米粒がつやつやしていて、食べると口の中に優しい甘さが広がっていく。我が家でも毎日「いちほまれ」を食べています。

宮崎さん:石川には美味しい果物がたくさん! 中でも好きなのは「ルビーロマン」というぶどうです。粒が巨峰の2倍くらいの大きさで、酸味が少なく上品な甘さがたまりません。能登半島の「大崎すいか」もおすすめです。日本海を見渡せる砂丘で栽培されていて、他の品種とは比べ物にならないくらい甘いんですよ。

五木さん:福井には、お酒好きの間で有名な「黒龍」という日本酒もありますね。特に創業者の屋号がついた「黒龍石田屋」はワインのような味わいが楽しめるということで、フランスを始め海外でも大人気。新酒が出るとあっという間に売り切れて、なかなか手に入らないと酒好きの友人が嘆いていましたよ(笑)。

宮崎さん:あと、石川県民のソウルフードと言えば、まつやの「とり野菜みそ」。大豆と米麹から作る米味噌に数種類の調味料や香辛料などを混ぜ合わせた調味味噌です。この「とり野菜みそ」を出汁にして、白菜、ニンジン、豚肉を入れたシンプルな鍋が美味しいんですよ。冬になると我が家の定番です。

五木さん:その「とり野菜みそ」は元々、北前船に乗る船乗りたちに栄養価の高い料理を食べさせるために、江戸時代に考案されたそうですね。

宮崎さん:だからなんですね。「とり野菜みそ」の「とり」は栄養を「とる」という意味でつけられたとか。最近では「能登丼」も注目されています。”奥能登産のコシヒカリ”や”能登産の野菜や肉”を使い、食器も”能登産の器や箸”を使うというルールで、46軒のお店がそれぞれオリジナルの丼をつくって能登半島を盛り上げています。全種類を制覇した人には「超丼人」という称号が与えられるので、私も挑戦してみようかなって。

五木さん:丼といえば、福井は「ソースカツ丼」。最近は他の県にもありますが、もともとは福井の「ヨーロッパ軒」の創業者が、明治時代にドイツに料理の修行に行ったとき、ドイツ仕込みのウスターソースを日本人の味覚に普及させようと、苦心を重ねて考案したのが「ソースカツ丼」なんですよ。ヨーロッパ軒は、敦賀を始め福井県内には何店舗もあるんですけど、残念ながら東京には1軒も支店を出していません。子どものころから「今日は贅沢しよう」という日は、家族で「ソースカツ丼」を食べに行くのが習慣だったので、福井に帰ると今でも必ずヨーロッパ軒を訪ねています。

宮崎さん:地元に帰ったときに、私が必ず食べに行くのは「8番らーめん」です。石川県内では有名なチェーン店ですけど、やっぱり全国展開していません。野菜らーめんが有名で、醤油も味噌もとんこつもひととおり揃っていますが、私が一番好きなのは「唐麺」という汁なし麺。実家に帰ったときは必ず食べに行きますし、唐麺が食べたいあまり「石川に帰りたい~」と思うこともあるくらい(笑)。そして、お土産に「加賀棒茶」を買って帰るのが、いつもの帰省パターンなんですよ。

「風景」も「食」も日本海の影響を受けていますね(五木さん)

五木さん:風景にしても、食べ物にしても、北陸には日本の原風景が息づいていますね。福井も石川も「冬は寒くて雪が降り」「暑い夏には海水浴」と、四季の移り変わりがはっきりしている。そして、何よりも日本海の影響が大きいでしょう。海の色も、冬は鉛色、夏は真っ青と季節ごとに変化する。何百年も前からずっと変わらない、この四季折々の景色がまさに日本の原風景だと思うんですよ。

宮崎さん:北陸地方には昔ながらの発酵食品文化も根付いていますよね。富山のます寿司、石川のかぶら寿司……。

五木さん:福井はへしこ。発酵食品は昔の人たちが考えた保存食。雪がこんこんと降る時季には食べ物が足りなくなるので、季節がいいときに様々な保存食を用意して厳しい冬に備えておく。こうした昔ながらの日本人の食の知恵が、北陸には今でもちゃんと残っているんですね。

宮崎さん:食文化に関しても、やっぱり日本海の影響が大きいですね。

五木さん:そう、僕が子どものころ、実家の食卓に並ぶのはもっぱら鯛やヒラメといった日本海で捕れる白身の魚。そのせいか、お寿司屋さんに行っても、僕はいまだに赤身の魚は食べません。「マグロの中トロが美味しいよ」とすすめられても、太平洋の魚より日本海の冬の寒さで身が引き締まった白身の魚のほうがやっぱり美味しいと思うから。

宮崎さん:私も白身のお魚が大好きで、実家でつくるサワラの昆布締めが大好物です。お寿司屋さんで最初に頼むのはいつもヒラメのエンガワ。最後にノドグロの炙りを食べるのを楽しみにしています。

五木さん:能登半島には能登牛寒ブリ、敦賀半島には越前ガニ甘エビなど、他にも美味しいものがたくさんありますからね。食を通じて、日本全国のみなさんに、北陸の魅力をもっと知ってもらえたらいいですね。

取材の後に……

能登産のフルーツと搾りたてミルクを使った「nonoto」の里山デザートは、宮崎さんもお気に入り。「口の中に、ブルーベリー本来の甘さが広がるアイスミルクはおすすめです。さっぱりとした酸味と、いちじくの風味が溶けあったフローズンヨーグルトも美味しい!」

notonoのアイスミルクについてはこちら

撮影/嶋野 旭 取材・文/内山靖子

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