積丹半島
えぞあわびにかける想い、岩内町にこだわる味
石塚水産は、岩内町で取れる海の恵みを大切にしながら、食品作りに力を入れている水産加工会社。代々、漁師を家業にしてきたことから、素材の味を生かすための知識と技術はお墨付き。昔ながらの製法を継承しながら、町おこしとなる新たな特産品の開発に取り組んでいます。
PROFILE
石塚貴洋さん
石塚水産代表取締役。4代つづく漁師の家に生まれる。大学時代はバンド活動にのめり込み、卒業後に東京へ上京。石塚水産の創始者である父親が体調を崩したことがきっかけで、地元に戻り、水産加工業を継ぐ。2010年から現職。漁師の知恵を生かした伝統的な水産加工製造技術を継承しつつ、「塩辛オフ会」などのイベントを行うなど、若い世代に水産文化を広げる活動もおこなっている。現在「しりべし未来ネットワーク」や「岩宇まちづくり連携協議会」などの地域活動にも力を入れている。
あわび商品化の要、殻むきにチャレンジ!
石塚水産は「えぞあわびアヒージョ」や「あわびの塩辛」などの天然あわびを使った人気商品を多数取り扱っています。美味しさの秘密を探るため、JALふるさと応援隊・中谷比那乃さんに、あわびの殻むきを体験してもらいました。
石塚さん:まずはあわびの身を殻からはずしましょうか。あわびの貝にも上下があって、一方は貝の縁が丸くなっていて、もう一方は先が尖って薄くなっています。この尖っている側からスプーンを入れていきます。
石塚さんが取り出したのは、どこの家庭にもあるような一般的なスプーン。
中谷さん:あわびの身ってスプーンで外せるんですね!
石塚さん:このスプーンは、先の厚みを砥石で調整した特別製なんですよ。では、貝の隙間からスプーンを入れていきましょうか。
中谷さん:固いところに当たりました。全然動きません。
石塚さん:貝の形に沿わせてスプーンの角度を調整するといいですよ。力を入れなくても簡単に入る場所があるはずです。
中谷さん:カツッと奥に入りました。貝とスプーンのカーブを合わせる感じですね。途中までは力がいるんですけど、きれいに入ると気持ちよく剥がれます。
石塚さん:そう、それが貝柱がはずれた感覚です。貝にウロ(肝)を残して、身だけ取りはずしていきましょう。外れたら、身は塩水に浸けてください。
中谷さん:きれいに取れました。貝に残ったウロはどうするんですか?
石塚さん:「えぞあわびアヒージョ」や「あわびの塩辛」には、ウロもひと瓶に一個入れています。磯の香りがして味も濃厚で、通にはたまらない部位なんですよ。ということで、こちらも使いますので、貝から外していきましょうか。
中谷さん:石塚さんは1日何個くらい殻をむくんですか?
石塚さん:繁忙期は30kgくらいですかね。1kgあたり、8個くらいになるので、240個くらい……。鮮度を保つために、作業日の午前中には、むいて捌いてという作業を終わらせてしまいます。
中谷さん:そんな量、私なら1日あっても終わりません!
石塚さん:最初のうちは1個あたり30秒くらいかかってしまいますが、慣れれば数秒でむけるようになります。中谷さんはすじがいいので、いつかうちであわびの担当をしてください(笑)。
中谷さん:ぜひ、いつかお願いします(笑)
いかの沖漬けからスタートした石塚水産
石塚水産の看板商品は、ほかに「あわび塩辛」もありますが、あわびだけではありません。石塚さんの父・英治さんはかつて、いか釣り漁船団の船団長を務めていたということもあり、いかの沖漬けは天下一品です。まず驚かされるのは、その見た目。10月から11月にかけて岩内湾で水揚げされた旬真っ盛りの真いかは丸々と太って肉厚。その一級品を一本そのまま使っています。昆布の出汁が効いた醤油ベースのタレに漬け込んだ沖漬けは、甘みのある身だけではなく、濃厚なワタまで楽しめますよ。
「父の代に漁師から水産加工業に切り替えてできたのが石塚水産なのですが、このいかの沖漬けが看板商品となりました。味付けも創業当時から変えておらず、伝統の味を再現しています。いわば石塚水産の原点です。最盛期に獲れたいかを加工して冷凍したものを出荷しているのですが、半解凍にしてスライスするとルイベとしてもお楽しみいただけます」(石塚さん)
石塚さんは、今でこそ水産加工会社の社長を務めていますが、実は過去にプロミュージシャンとして活動していたという変わった経歴を持っています。
「札幌の大学に通っていたときにバンドを組んでいたんですけど、人気が出て大手レコード会社と契約できたんですよ。それから東京に出て、プロとして音楽活動を始めました。その後、バンドは解散してしまったのですが、しばらく作詞・作曲家としてお仕事をもらっていました。そんな折に父が体調を崩して、地元に戻ってきたんです」(石塚さん)
ミュージシャンだからこそできた商品の魅力の届け方
岩内町に戻りたてのころは、毎日、黙々と作業をこなす日々に物足りなさを感じていたのだそう。
「従業員としかコミュニケーションを取らない日々が退屈だったんですよね(笑)。僕が音楽を通して学んだことは、“聴く人に届ける”ということ。せっかくならただ作業をこなすだけではなく、お客さんたちに商品の魅力を届けることができないかなということで、百貨店の催事だったり、『塩辛オフ会』や『日本酒の会』などのオリジナルのイベントを始めました。生産者が最終消費者の前で、もののよさをリアルに語るというのは、ライブでお客さんと触れ合っているときの感覚と似ていて、とても楽しい時間でしたね」(石塚さん)
伝統を継承しながら、いままでにない商品の開発や売り方を考え、次々に新たな挑戦していく石塚さん。今後は、石塚水産をどのように発展させていきたいのか、目標を聞きました。
「近い目標では『えぞあわびアヒージョ』のほかに『つぶ貝のアヒージョ』と『ベビーホタテのアヒージョ』というビールやワインに合う新商品を開発中です。魚離れをしている若い世代が手に取りたくなるものを作っていきたいですね。長い目で見れば、食を通して岩内町を元気にしていきたい。自然豊かで海産物も豊富な岩内町は小さな港町ではありますが、観光客を十分楽しませることができる場所だと思っています。この土地の文化に興味を持ってくれる人が増えたら嬉しいし、ここで新しいことに挑戦したいという人がいたら、ぜひ一緒に頑張っていきたいですね」(石塚さん)
- 石塚水産
住所:北海道岩内郡岩内町宮園235-48
電話番号:0135-62-3500
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※価格などの情報は取材時のものです。
撮影/吉澤健太 取材・文/小石原悠介