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大隅半島

ここがイチオシ!
大隅半島

kiitos=「ありがとう」

チョコレートが紡ぐ優しい未来

お店の名前「kiitos」とは、フィンランド語で「ありがとう」の意味。この感謝の気持ちは、カカオ豆などの原料を提供してくれる生産者へ。大切にチョコレートを作る工場の仲間たちへ。協力してくれる販売店へ。そして、商品を食べていただいたすべての人たちへ向けられています。食べるとほっとする優しい味わいは、代表である大山真司さんたちの温かな気持ちが形になっているのかもしれません。チョコレートを通した笑顔の輪はどのように広がってきたのか、MBC南日本放送の美坂理恵アナウンサーと取材しました。

【INDEX】
●地域と想いをつないでいく kiitosの商品たち
  【CACAO COLA:カカオコーラ】【Cacao Ringo Butter:カカオりんごバター】
●目指したのは 本当に美味しい鹿児島発のチョコレート
  ―材料はカカオ豆と砂糖だけ、本物のシングルオリジンチョコレート
  ―チョコレート作りを支える個性豊かなメンバーたち
  ―これからも全国にkiitos=「ありがとう」を届けていく

地域と想いをつないでいく kiitosの商品たち

kiitosが作るのは、桜島型のチョコレートだけではありません。店頭限定で食べられるソフトクリーム、アイスクリームのほか、地域企業とのコラボによる新商品も幅広く生み出しています。その活動は鹿児島県を飛び出し、県外の企業とも協力して商品開発を進めるほど。そこには、大山さんの地元を元気にしたいという情熱が強く込められています。

【CACAO COLA:カカオコーラ】

珍しい「カカオコーラ」は町おこしイベントの一環で、阿久根市に本社を置く水産加工会社・下園薩男商店とのコラボで開発、鹿児島県食材を中心に完成させたオリジナルクラフトコーラの素。味の決め手は「辺塚だいだい」「グリーンレモン」。大隅半島はグリーンレモンが日本一早く栽培される土地としても知られており、フレッシュな香りと酸味が特徴。若い世代が復活させた地元農園のものを使用しています。これらの果汁をスパイスやカカオニブとブレンドすることで、口に入れた瞬間の爽やかさや後味のさっぱり感を演出しています。

「このシロップはとても万能で、炭酸水で割って飲む以外にも、ミルクを加えるとチャイ風に。アイスクリームにかけるソースとしても楽しむことができます。私はお酒が好きなので、炭酸で割ったものにクラフトジンを加えてよく飲んでいます」(大山さん)

【Cacao Ringo Butter:カカオりんごバター】

「カカオりんごバター」は、ロスフルーツを積極的に利用するブランド「nin」とのコラボ商品。東京の展示会に出店した際、大山さんがnin担当者に声をかけたことが始まりでした。傷ついてしまった果実や、少し古くなって店頭に並べるのが難しいもので作るninの主力商品の1つ「りんごバター」に、kiitosのカカオニブを練り込むことで、カカオ本来の力強い香りと酸味が凝縮。一体となったその味は、“フルーツを感じるカカオ”という新しい可能性を感じさせてくれます!トーストにたっぷりと塗って食べるのがおすすめです。

「ロスになってしまうりんごがあるように、kiitosでもピッキングではじかれるカカオニブが出てきてしまいます。お互いにロス食材という点で響き合うところがありました」(大山さん)

「カカオコーラ」「カカオりんごバター」、そして「チョコレート」各種などkiitosの商品購入はこちら

目指したのは 本当に美味しい鹿児島発のチョコレート

カカオ豆の選別からチョコレートにするまでを一貫しておこなう“ビーン・トゥ・バー”。ひとつの商品を単一農園のカカオ豆から作る“シングルオリジン”。そして原料は“カカオ豆と砂糖だけ”を使用する。そのこだわりをkiitosはずっと守っています。これは、製菓の専門家でもかなり難しいチャレンジなのですが、代表の大山さんは全くの門外漢であったそう。美味しさにこだわって行きついた、チョコレート誕生の舞台裏を伺いました。

―材料はカカオ豆と砂糖だけ、本物のシングルオリジンチョコレート

「カカオは生き物。育った環境の違いで個性もさまざまです」(大山さん)

美坂さん:kiitosのチョコレートはその風味と味わいの違いに驚く、初めての美味しさでした!原料のカカオ豆はどう選んでいるのか教えてください。

大山さん:試作して、美味しいと思うカカオ豆を商品化しています。カカオ豆の仕入れ先は4つあって、1つ目はカカオを扱う企業、2つ目はコーヒー豆を扱う企業。コーヒー豆を作っている農場がカカオを作っていることもあって、そのルートから掘り出し物が見つかることがあるんです。3つ目は各国現地にいる豆バイヤー。日本に立ち寄った際に営業で持ってきてくださるということがあります。そして4つ目は、友人の“カカオハンター”(笑)。「アマゾンの奥地に原種に近いカカオがある」と聞けば、何百万もかけて命がけで採りに行ってしまうんですよ。イベントでそのカカオを使ってチョコレートを作ったのですが、面白い味でしたね。

美坂さん:それはすごい!宝石ハンターみたいなお仕事ですね(笑)。チョコレートのレギュラー商品は、それぞれの仕入れ先から気に入ったカカオ豆を定期的に仕入れているということですか?

大山さんカカオは生き物なので、同じ産地・同じ種類でも毎年ちょっとずつ味が違うんです。同じ豆でもこんなに味が変わるなんて面白いな~と常々思います。なので各国から豆を取り寄せて、年に一度は種類の見直しをしています。「今年は、この豆はお休みにして別の国の農園のものを試してみようか」という感じで、レギュラー商品も入れ替えていますね。

「年に一度は豆の見直しが欠かせません」(大山さん)

美坂さん:その年に美味しい豆を仕入れて、チョコレートにされているんですね。素材へのこだわりといえば、お砂糖も特別なものを使っているんですよね?

大山さん:そうなんです。kiitosのチョコレートの材料はカカオ豆と砂糖だけなので、砂糖はチョコレートの味を大きく左右します。現在はきび砂糖を使っていますが、新たに選んだのが鹿児島県の離島・喜界島の黒糖。ミネラル豊富なアルカリ性の地質で育つ喜界島の黒糖は、ベタつきがなく後味の良いところが特徴で、チョコレートがすごく上品な味になります。“メイド・イン・鹿児島”で砂糖も地元のものにこだわりたいということで切り替えの試作を進めています。

美坂さん:“メイド・イン・鹿児島”を、私もぜひ沢山の方に味わっていただきたいです。kiitosのチョコレートを食べるにあたって、オリジナルな楽しみ方があるとお聞きしました。

大山さん:もちろんそのまますぐ食べても十分美味しいのですが、少し寝かせると味が変化して面白いんです。ウチのチョコレートの賞味期限は1年になっていまして、冷蔵庫で保管していただければ時間をかけて食べられるので、その変化も楽しんでいただきたいですね。熟成させることで、味に深みが出てきますよ。

美坂さん:まるでワインのようですね!

kiitosのチョコレートの楽しみ方に感嘆する美坂アナ

大山さん:先日、友人から深夜に電話がかかってきまして、何事かと思って出てみたら「大山の言う通り、半年寝かせたら味が全然違ったよ!」という報告でした(笑)

美坂さん:「いますぐ電話したい!」と思うくらいの感動と驚きがあったのですね。ただ私の場合、半年間我慢できずに全部食べてしまいそうです(笑)。これだけ奥が深いチョコレートを作るきっかけは何だったのですか?

大山さんチョコレートって、作り手も、食べる人も両方幸せにするお菓子じゃないですか。それを、トレンドになっているビーン・トゥ・バーでできたらいいなと思ったんです。どうせ作るなら美味しいチョコレートを作りたい!そう思って動き始めたのは2016年のことでした。それと、実は私の本業は福祉の仕事で、NPO法人「Lanka」を運営しています。障がいを持っていても働きたいという強い気持ちを持っている人たちが、個性を生かしながら働ける場を作りたいという想いもありました。

チョコレート作りへの熱い想いをお話くださいました

美坂さん:お仕事支援がきっかけの1つだったとは驚きました。そこから、どのように今のkiitosができあがったのでしょう?

大山さん:「よしやろう!」と思い立ったのは良いものの、製菓に関する知識はゼロ(笑)。そこで、広島県尾道市にある有名なチョコレート工房「USHIO CHOCOLATL(ウシオチョコラトル)」にいきなり電話したんです。「チョコレート作りを教えてもらえませんか?」って。そしたら、なんと修行させてもらえることになって。

美坂さん:すごい行動力ですね!修行はいかがでしたか?

大山さん:すぐに私とスタッフが広島に行って、カカオからチョコレートを作る方法をゼロから教えていただきました。その後、約1年の準備期間をかけて2017年にkiitosを立ち上げることができました。気候や湿度の違いが影響しているのか、同じ豆の焼き方や調理法で作っても、広島で出せていた味が鹿児島では再現できないことがあり、kiitosの立ち上げまでにこの土地に合った作り方をみんなで模索しました

珍しい形にも意味があります

美坂さん:なるほど、広島に比べると鹿児島が暖かい分、そういった難しさがあるのですね。チョコレートの形を台形にしようというのも、この頃に考えられたのですか?

大山さん:そうです。“メイド・イン・鹿児島”が自慢のチョコレートにしたかったので、シンボルの桜島型を選びました。実は、それ以外の意味もあって「USHIO CHOCOLATL」さんのチョコレートが六角形なんですよ。それを半分にした形が台形なので「kiitosは、まだ未熟でUSHIOさんの半分くらいだな」という気持ちも込められています。板チョコといえば長方形が定番、になっていますが定義ではないんですよ。いずれにしても、せっかくなら枠からはみ出る自由な商品を作ろうという企みはありましたね。

―チョコレート作りを支える個性豊かなメンバーたち

Lankaの作業所に集まってくれたメンバーのみなさん

丁寧な手作業で、1日に約100枚のチョコレートを愛情込めて作り出すkiitos。その運営母体は、障がいを持った方の就労を支援するNPO法人「Lanka」です。「Lanka」とはフィンランド語で「糸」という意味。一本の糸では切れやすくても、さまざまな人が寄り集まれば切れない糸になるという人と人との繋がり、共生を大切にしています。現在は20名ほどが所属。kiitosの“メンバーさん”と呼ばれ、チョコレート作りの工程すべてを全員で手分けして担当しています

美坂さん:kiitosのチョコレートはすべて、メンバーさんたちの手で作られているんですよね?

大山さん:豆の選別から調理、包装まで、すべて彼らでおこなっています。豆を探したり、業者と打ち合わせをするのは、私たちスタッフが動くところではありますが、試作して味をみたり、豆の焼き時間を調整したりは、メンバーさんとスタッフが意見を交わして作り上げています。店頭での販売もメンバーさんが中心です。

美坂さん:それぞれの工程の担当は、どのように分けているのでしょうか?

大山さん:誰でも人にはそれぞれ得手不得手があります。細かな作業を集中しておこなうのが好きな方もいれば、調理の作業が好きな方もいます。大切にしているのは適材適所。自身の得意な分野を生かして働いていただくということです。ちなみに“チョコ長”という責任者も設けているんですよ。

美坂さん:ユニークなネーミングですね。工場長ではないんですか?

大山さん「工場長は恥ずかしいから、チョコ長ならやるよ」ということでやってくれています(笑)。メンバーのみんなもチョコ長を中心に一致団結していますね。

集中力が必要なピックアップ作業は、職人技です

美坂さん:細かな作業といえば、豆の選別や粉砕後の殻の取り除きは繊細な工程でしたね。

大山さん:数千、数万粒の中から状態の良くない豆だけをみつけるというのは、私にも難しい作業です。毎日真剣に向き合っているからこそ、見つけ出せるという職人技だと思います。最初は調理場の仕事が、チョコレート作りの花形のように思うメンバーさんもいましたが、それを支えるのは丁寧な下処理です。調理場も選別もチョコ長も等しく大切な仕事で、そこに優劣はありません。そのことをメンバーさん全員が、時にぶつかりながら納得して、一丸となっていきました。誰を欠いてもkiitosの商品はできないんです

美坂さん:メンバーさんそれぞれが、誇りを持って自分の仕事をされているということが伝わってきました。それがチョコレートの美味しさの理由の1つなんでしょうね。

作業場のホワイトボードには、メンバーさんの仕事内容がびっしり書き込まれています

美坂さん:kiitosの商品は、おしゃれな包装も魅力ですよね。プレゼントにも喜ばれるパッケージだと思います。どれも独創的ですが、どのように作っているのでしょうか?

大山さん:Lankaではkiitosの仕事以外に「アート」という作業も設けています。そこでkiitosの商品を入れる手提げ袋、ダンボールにも自由にイラストを描いてもらっているんです。ただ、チョコレートの包装紙だけは、メンバーさんにお題を出して描いてもらいます

美坂さん:お題とは、どんなものでしょうか。

大山さん:まずはチョコレートを食べてもらって「その紙で包むチョコレートを、イメージしたイラストを描いてください」というものです。【コスタリカ】の鮮やかな色合いのパッケージは「地球上で最後の楽園なんだぜ」なんてことを話しながら、【ペルー】のパッケージは「あなたがナスカの地上絵を描くとしたらどんなイラストにしますか?」なんて話をしながら自由に描いてもらったデザインです。それぞれの国についての説明や、その国の音楽を聴いたインスピレーションから完成したイラストをパッケージにしています。

メンバーさんの感性でうまれる個性的なデザインが包装紙に

美坂さん:その様子を思い浮かべるだけで楽しくなりました。ちなみに【コーヒー】のチョコレートは、国ではないですがどのようなイメージなのでしょうか?

大山さん:白い包装に茶色のラインが入っているのですが、これは麻袋をイメージしているそうです。そして、細かい点がコーヒー豆。お店では、他の商品についてでもどういうイメージで描かれたものなのか、知りたいという方には解説させていただいています

美坂さん:コーヒーのイメージから、こんなデザインが描けるなんて素晴らしいですね。

大山さんこれって凄い才能ですよね。「絵しか描けない」じゃなくて、「絵が描ける」んです。純粋に「すごく上手やな」って思うから絵の能力を伸ばしていきたいし、それがkiitosの仕事以外のことにも繋がるように手助けしていきたいと思っています。

メンバーさんが自由に描いたイラスト。芸術的です

―これからも全国にkiitos=「ありがとう」を届けていく

美坂さん:沢山お話を伺ってきましたが、今後挑戦していきたいことについても教えていただけますか?

大山さんチョコレートの製造過程で廃棄物となってしまうカカオの殻を有効活用しようと、染物に挑戦しています。実は私が着ているシャツも、そのカカオの殻で染めたものです。kiitos店頭では、カカオで染めたエコバックをカプセルトイの容器に入れて販売しています。

美坂さん:そうだったんですか!落ち着いた暖かな色合いで素敵です。それに廃棄物を有効活用する、地球にも優しい取り組みですね。カカオ染めのアパレルができたなら、kiitosの新たな事業にもなりそうです。

大山さん:それ以外では、kiitosをきっかけに購入者の方のマインドを変えていければいいなと思っています。

美坂さん:どういう意味でしょうか。

大山さん:kiitosが純粋に美味しいチョコレートを目指したのは、しっかりと価値の高いものを作れれば、誰が作ったかどうかに関係なく商品を求めてもらえるからです。kiitosが始まった2017年までは、石鹸作りやキャンドル作りなど、他の就労施設でもおこなっている一般的な内職作業をしてもらっていました。福祉団体が作った商品と聞くと、堅苦しさがあって手に取ってもらえなかったり、逆に「障がい者が頑張って作った商品だから買ってあげよう」という心の声が聞こえてくる瞬間があったり、そこに寂しさを感じていたんです。なので、kiitosはこれからも本当にいい商品を作って、「美味しいから買う」というシンプルな行動で評価してもらえたらと思っています

美坂さん:大山さんのさまざまな取り組みについてお聞きしてきましたが、障がいのある方の就労支援のお仕事のイメージが一新されました。

大山さん:ウチに来られているみなさんは、オールラウンドにすべてを器用にこなすことはできないかもしれないけれど、イラストが得意だったり、豆の仕分けが得意だったり、それぞれが専門家でスペシャリストなんです。この地域は田舎でありますから、都心などに比べると障がいを持った方の働き口が多くありません。Lankaやkiitosを、そういう方たちが活き活きと働ける場所にしたい。誇りを持って仕事に取り組んでもらえる、そんな環境を作っていけたらと思いますね。

美坂さん:最後に、kiitosのこれからの目標について教えてください。

大山さん:全国の方に知っていただけるように活動していますが、実質的にはまだまだこれから。kiitosのチョコレートを日本中に届けることができれば、ここ鹿屋の街を知ってもらえる機会も増えますし、私たちの活動に興味を持ってもらえれば、世界が少し優しくなるのではないかなと思います。そのために、“メイド・イン・鹿児島”と胸を張って言える「本物のチョコレート」をこれからも追求していきたいですね。

美坂さん:優しい気持ちがこもったチョコレートで、日本中をkiitos(=ありがとう)の気持ちでいっぱいにできたらいいですね!

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※価格などの情報は取材時のものです。

撮影/吉澤健太<ロケ>、相沢琢磨<スタジオ> 取材・文/小石原悠介

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