西彼杵半島
とろけるほど軽いのに後を引く美味しさの秘密はズコットへの愛と丁寧な手作りでした!
長崎県西海市で創業100年を超え、今もなお人々に愛され続けている「お菓子のいわした」。ふわふわぷるぷるの食感と、軽やかなチーズの風味が楽しめる名物の「ズコット」は、九州はもちろん、日本全国からオーダーが絶えない人気っぷり。ご自身もズコットが大好きと豪語するテレビ長崎のアナウンサー・中村葉月さんとともに、その美味しさの秘密を探ってきました!
PROFILE
岩下武士/お菓子のいわした
「お菓子のいわした」のパティシエであり4代目店主。幼いころからプロゴルファーになる夢を持ち、高校卒業後は北海道に渡って特訓を積んでテストを受けるが、残念ながら不合格に…。1回のチャレンジで潔くプロゴルファーになる夢を諦め、一念発起してパティシエの道へ。佐賀県鳥栖市にある大人気ケーキ店「sweets village Ange Coco」にて6年間修業後、2019年より4代目店主として「お菓子のいわした」をアグレッシブに切り盛りする。
ショーケースには常時20種以上のケーキがずらり!
「お菓子のいわした」は大正7年に「岩下商店」として創業し、和菓子や保存食、日用雑貨を販売していたのが始まり。第二次世界大戦後、2代目から洋菓子作りをスタートさせ、1990年、3代目のときにカフェを併設したケーキ店「お菓子のいわした」に改名しました。
現在は「西海市らしさのあるお菓子づくり」をモットーに、名所でもある西海橋とうず潮をモチーフにした〝うず潮ロール〟や、西海市産の柑橘ペーストを使った〝こやらし柑〟など人気のケーキも多数。ガラスのショーケースの中には、色とりどりの可愛いケーキが常時20種類以上並び、さらに自家製のジェラートも! その中でも目を引くのが、まんまるフォルムのスフレチーズケーキ、ズコットです。
唯一無二の食感はひとつひとつ丁寧な手作業を経てこそ
中村アナがお店の奥にある工房に入っていくと、早速、お菓子の甘くていい匂いがしてきました。卵白をメレンゲ状に泡立てる工程などは機械を使用しますが、ズコットを作る過程のほとんどが手作業。繊細な生地を殺さずに、しっとりふわふわに焼き上げるためのこだわりだとか。「大量生産しようとすると機械を多用することになってしまいますが、この独特の生地感は手作業じゃないと出ないんです。手間と労力がいくらかかっても、ここは絶対に譲れないポイントです」(岩下さん)
①鮮度の高い朝採れ卵を使うというこだわり ②牛乳も地元の長崎産をセレクト ③鍋に牛乳を注ぎながら、バターを溶かしていきます ④溶きほぐした卵黄と小麦粉に③を混ぜていきます
また、シンプルなお菓子だからこそ素材選びが重要と語る岩下さん。なるべくストレスをかけずに育てられた鶏から採れる西海市のブランド卵「まつもとたまご」、質と鮮度のいい「雲仙山麓牛乳」、そして九州産の小麦粉を使用します。食材の生産者さんと共に、長崎を盛り上げていきたいという気持ちもあって、地元の食材を使うのもこだわりのひとつだそう。
⑤クリーム状に練ったチーズに、④を加えて混ぜていきます ⑥卵白は専用の機械でキメ細かいメレンゲ状に ⑦型ひとつひとつに生地を流していきます
メレンゲを作る工程以外はすべて手作業で進めていくので、一度に作れるズコットは12個。オーダーが多い時は1日に数百個焼き上げる日もザラだそうで…その労力と熱い想いに脱帽です。「1日に作れる数には限界がありますが、大手ができないことを追求していくことこそ、地元に根付く個人店の価値だと思うんです」(岩下さん)
⑧湯煎しながら蒸し焼きにします ⑨焼きあがったズコットを見て「こんなにふくらむんですね!」(中村アナ) ⑩型からスポッと出すのも職人ワザ!
オーブンに入れて蒸し焼きにすること約70分。取り出すと、型からはみ出るくらいの高さが出て、見るからにふわっふわ! 焼き上がったばかりのズコットを目の前に中村アナも大興奮です。「しっかりと時間をかけて蒸し焼きにするんですね。口の中でとろけるようなキメ細かくて柔らかい食感が、焼き上がったそばから想像できます」(中村アナ)
しばらく冷まして生地が落ち着いた後に、型から取り出すと、その名の通り神父さんの帽子のようなまんまるなズコットが出来上がり。「〝ズコット〟とはドーム型のケーキの総称。スポンジケーキの中にクリームやムース、フルーツなどを詰めたものも見かけますが、うちはとことんシンプルなズコットです。素朴だけれど飽きのこないあっさりとした味わい、そしてヤミツキになっていただけるような食感にこだわっています」(岩下さん)
口どけ軽やかなスフレはまさに〝優しさ〟でできている♪
出来上がったばかりのズコットを、お店の前にあるテラスで中村アナが試食! フォークを入れるとシュワシュワと泡がはじけるようにして、キメ細かなスポンジの断面が姿を現します。
「以前、番組でも取材させていただいたことがある、お菓子のいわしたさん。このズコットはふわっふわの見た目がとにかく可愛い! しばらく見つめていたくなるほどの愛しさです♡ 口に含むとたちまちとけるようなふわふわ食感で、〝ん~ま♡〟と言わずにはいられない! チーズの風味も甘みも軽やかで、気付いたら、あっという間に完食してしまいました!」(中村さん)
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撮影/山本雄生 取材・文/門司紀子