長崎県

北松浦半島(佐世保、平戸)

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北松浦半島

“スイーツの街”平戸から誕生した新食感キャラメル

長崎県平戸市は、16世紀にポルトガルやオランダなどとの交易を通して栄えた街で、西の都・フィランドと呼ばれていました。当時、タバコやぶどう酒、パンなどさまざまな舶来品があったなかで、日本の食文化に大きな影響を与えたのが砂糖。カステラやビスケット、キャラメルなどの西洋菓子が砂糖とともに伝えられ、平戸は“スイーツの街”として発展しました。しかし、かつては栄えた街も、現在では人口約29,000人にまで減少。「この街を後世に残したい」「平戸の魅力を全国に、世界に伝えたい」と立ち上がったのが、地元出身の小値賀布美華(おじかふみか)さんでした。小値賀さんが研究の末に作り上げた奇跡のキャラメルを、フリーアナウンサー前田真里さんと取材してきました。

PROFILE

小値賀布美華(おじかふみか)さん

長崎県平戸市出身。資格なし、経験なしの普通の主婦からスイーツブランドを起こし、2016年に「心優-cotoyu sweets-」を、2019年に「firando」を設立。地元食材にこだわり抜いた商品の数々は、情報番組『ZIP!』(日本テレビ系)や『めざましテレビ』(フジテレビ系)をはじめ、多数のメディアに取り上げられて注目されている。「firando」の看板スイーツ「MANGETSU」は長崎県特産品新作展で最優秀賞受賞した。国内のみならず、中国や台湾など海外にもビジネスを展開。その経験を活かし、2020年にはローカルビジネスのブランディング・マーケティング・販路拡大を支援する会社「小値賀地域ブランド製作所」を設立した。現在は、自社の経営を続けながら、クライアントワークやセミナーなどにも力を入れている。

歴史を尊び、地元食材にこだわり作られた絶品スイーツ

フルムーンキャラメロ「MANGETSU」

南蛮貿易の時代、平戸に伝わってきたキャラメロ(キャラメル)を再現したというお菓子は、平戸島でだけ作られる満月の塩を使っています。自然の美しさを表現するため、満月の形に型取られ、フルムーンキャラメロ「MANGETSU」と名付けられました。ミルク、塩など材料を地元産にこだわって作り上げた新たな平戸名物は、長崎県特産品新作展で最優秀賞を受賞や、食べるJAPAN美味アワード、チームシェフコンクールで審査員特別賞を受賞。とろける新食感が話題となり、ご褒美スイーツとして全国から取り寄せの注文が殺到しているそう。その人気の秘密を前田さんが早速レポート!

「10秒の見極め」がキャラメルの食感の決め手

まずは、フルムーンキャラメル「MANGETSU」の製造現場を見学させていただくことに。製造工程をオーナーの小値賀さんに解説していただきました。

前田さん:お菓子工房というと、大きな機械を使って製造するイメージだったのですが、すべて手作りなんですね。なんだかほっこりします。

小値賀さん:現在は、小ロットの生産ということで、キャラメルの生地作りから梱包まですべて手作業でおこなっています。最初は私のキッチンからスタートしたので、その名残と言えるかもしれませんね。キャラメル作りは、大きく分けると生地作り、型入れ、冷凍、粉糖をまぶして、最後にパッケージングという工程になっています。

前田さん:まずは生地作りですね。素材のこだわりについて伺えますか?

小値賀さん:ミルクは、平戸で唯一の酪農家「大山牧場」の搾りたてのものを使っています。コクがあるのに、さっぱりとしていて本当に美味しい牛乳なんです。牛乳が温まったところで、お砂糖と蜂蜜を加えてコトコト煮込んでいきます。

前田さん:砂糖はずいぶん濃い色をしていますが?

小値賀さん:鹿児島県にある喜界島の粗糖にこだわっています。サンゴ礁の土壌で育てたもので、ミネラル満点なんですよ。

前田さん:一般的な砂糖とは違うんですね。

小値賀さん:精白されていない分、栄養分も抜けてなくて、自然な甘さがあります。グラニュー糖などの白砂糖よりベタつかないというのも魅力ですね。粗糖を加えたら、焦げ付かないように混ぜながら約90分をかけて煮詰めていきます。

前田さん:その間、片時も離れられないなんて、忍耐が必要な作業ですね。

前田さん:さて、90分が経ちました。ミルクの甘い匂いが工房内に広がっていますね。香りだけでもう美味しいことがわかります。煮詰める前より随分と色が変化したようですが、どのタイミングで型に流し込んでいくのでしょうか?

小値賀さん:私たちは「10秒の見極め」と呼んでいるのですが、10秒単位で硬さを確認していきながら、いちばん良いタイミングで火を止めます。その日の気温によっても左右されるので、とても繊細な作業だといえます。

前田さん: お客様に評判の口溶けはこうして作られているんですね!

小値賀さん:炊き上げが足らないと上手く固まりませんし、火を入れすぎてしまうと硬くなってしまいます。この商品の美味しさのキモとなる工程ですね。火を止めたら生地の粗熱を取り、型に流し込んでいきます。

前田さん:円形のリングに流し込み、冷やしたものがこちらですね。粉糖をまぶしていくということですが、ここにもこだわりのポイントが?

小値賀さん:粉糖には平戸で作られた「慈眼の塩」を混ぜています。

前田さん:どんなお塩なんでしょうか?

小値賀さん:このお塩、満月の夜に汲み上げた海水で作っているんです。月の引力で海水の中にある元素が水面の近くに引き寄せられていくことで、旨味が増すといわれています。MANGETSUという名前は、このお塩を使っているからでもあるんですよ。

前田さん:名前の由来になっているということは、味の決め手にもなっているということですね?

小値賀さん:ただの粉糖をまぶすよりも、そこにお塩を加えることで味がぐっと引き締まります。

前田さん:ここから梱包ということですが、粉糖をケースにもたっぷり入れていくんですね。

小値賀さん:しっかりとケースにもまぶすのは、キャラメルがくっつかないように打ち粉にするという意味もあります。それに、この粉が本当に美味しくて、たっぷり入れると喜ばれるんですよ。

前田さん:どんな味がするのか、すごく楽しみになってきました!

ナイフを入れた瞬間に違いがわかる衝撃のキャラメル

出来上がったばかりのフルムーンキャラメル「MANGETSU」を前田さんが試食させていただきました。

「ナイフを入れた瞬間に『コレは今まで食べたことがないキャラメルだ』とわかります。柔らかさが全然違いますね。口に入れるとさらなる驚きが。あっという間に溶けていくんです。粗糖を使っているためなのか、甘さがしつこくないのに、コクを感じます。素朴で濃厚な風味のミルクとも相性が良いですね。そして、きめ細かい粉糖がちょうどいい味のアクセントになっています。塩が入っているのでしょっぱいのかなと思うかもしれませんが、塩味が尖っていなくて、粉糖に旨味を加えている感じです。これはいくつでも食べられてしまいます!」(前田さん)

「白い恋人」のように平戸を代表する銘菓に

前田さんの試食する様子を嬉しそうに眺めていた「firanndo」オーナーの小値賀さん。もともと主婦だった彼女がどのように新食感キャラメルを開発したのか、そもそもなぜ起業に思い至ったのか、MANGETSUに込められた想いを小値賀さんに伺いました。

前田さん:先ほど、MANGETSUを試食させていただきましたが、想像した以上に柔らかくて、溶けるような口当たりに驚きました!

小値賀さん:そのリアクションを見るのがいちばん好きなんですよ。言葉にしていただくよりも、召し上がっていただいた時の表情こそ、率直な感想だなと感じるので。キャラメルのイメージというと、昔からある硬めの大手商品か、北海道の有名な牧場のキャラメルを思い浮かべる方が多いと思うんです。それらとは全く違う商品を作ろうと研究した結果、この食感に行き着きました。

前田さん:小値賀さんは、どこかで製菓の勉強をされていたのですか?

小値賀さん:それがまったくしてないんですよ(笑)。本当にただの主婦でした。お菓子作りはもともと、子供のころから趣味でやっていたんですけどね。

前田さん:どこでその味覚センスを磨いたのか、とても興味が湧きますね(笑)。

小値賀さん:何か理由をつけるとしたら、幼いころからこの土地の美味しいものを食べて育ってきたから舌が肥えているのかも。それで本当に美味しいものを本能的に見分けられるようになったんだと思います。

前田さん:firandoを立ち上げて、MANGETSUを開発したのも地元・平戸への愛がきっかけだったそうですね。

小値賀さん:平戸は過疎が進んでいる地域で、現在30,000人弱の人口ですが、2045年には半分の15,000人程度になるといわれています。深い歴史があって、食資源も豊富なこの土地が、いつかは忘れ去られてなくなってしまうのは、あまりにも寂しいじゃないですか。私にできることは何だろうと考えたときに、”平戸の歴史を未来に繋げていくこと”が浮かびました。将来、平戸という地名がなくなってしまったとしても、お土産という形として残れば、「firando」の名前を語り継ぐことができるのではないかと考えて、このブランドを立ち上げました。

前田さん:地元食材にこだわっているという点にも繋がってきますね。

小値賀さん:MANGETSUは、ブランドストーリーをとても大切にしていて、地元・大山牧場のミルクや慈眼の塩という平戸にしかないものを使っています。それを南蛮菓子と伝わってきたキャラメルにすることで、二重三重にストーリー性を高めて、全国のお客様に平戸を感じていただける工夫をしています。

前田さん:あくまでも狙いは、県外のお客様に向いているわけですね?

小値賀さん:firandoのブランドの使命は、平戸を表現してそれを各地に伝えること。その点は、ブレずにこれからもやっていきたいと思っています。目指しているのは、北海道の「白い恋人」のように、商品名を聞いただけでその土地の情景が浮かぶような商品です。

前田さん:エネルギッシュな小値賀さんなら、実現できそうな気がします。国内だけでなく、海外に目を向けた取り組みもされていますよね?

小値賀さん:現在は、中国市場を視野に商談を進めています。中国には、月餅というお菓子があるのですが、月は縁起の良いものとして親しまれているんですよ。MANGETSUも月をモチーフとしたお菓子なので、その点、相性が良いのではと思っています。

もう一つの人気商品「PRIORI」。左から紅茶味、キャラメロ味、抹茶味

前田さん:firandoには、MANGETSU以外にもPRIORIという看板商品がありますね。

小値賀さん:プリンオリジン(pudding origin)の略で、平戸だけにしかない商品を目指しました。ふんわりとしたプリン生地、キャラメロ、カステラ、キャラメリゼと4層構造になった商品になっています。

前田さん:たしかに、キャラメルやカステラから平戸らしさを感じます。パッケージもおしゃれで、贈り物に重宝しそうですね。

小値賀さん:パッケージにも、平戸らしさを詰め込みたいということで、黒い筒は茶筒を使っています。

前田さん:平戸はお茶にも縁があるんですか?

小値賀さん:臨済宗の開祖である栄西というお坊さんが、宋の時代に中国からお茶の種を持ち帰ったのが、平戸にある富春園だといわれています。それで、“日本茶発祥の地”と呼ばれているんですよ。

前田さん:平戸にはこんなにたくさん日本の始まりとなった商品があったなんて、知りませんでした!

子供の授業参観でスタッフをリクルート!?

スタッフ7名は全員、地元平戸のお母さんたち

firandoの商品を製造するスタッフは現在7名。全員女性の活気ある職場です。彼女たちのリクルート方法も一風変わった“小値賀流”だそう。

「スタッフは全員地元のママさんなんですよ。ひとり、製菓学校を卒業した子がいるんですけど、基本的にみなさん、未経験の方たちです。彼女たちは、私と同世代で保育園生や小学生の子供を持つ親で、地元のテレビ番組で放送されているのを見たという方もいれば、SNSの求人募集を見て応募したという方もいます。いちばん変わったリクルート方法といえば、私が子供の授業参観に行ったときにスカウトした方がいるということでしょうか(笑)」(小値賀さん)

今回取材した「MANGETSU」は、ひとりの主婦のあふれる地元愛とたぐいまれな行動力から完成した、平戸の新名物。美味しさはもちろん、その魅力的なストーリーのおかげで、日本全国だけでなく世界中に愛されるスイーツになるのも、そう遠くない将来実現しそうです。

オーナーが愛する平戸の名所めぐりへ行ってきました! →次のページへ

プレゼントキャンペーン開催中!

MANGETSU.petit A 3箱セット(キャラメロ・グリーンティー・コーヒー)を合計3名様にプレゼント! 下記応募要項をご覧いただき、ふるってご応募ください。

応募要項はこちら

撮影/吉澤健太 取材・文/小石原悠介

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西洋と日本の文化の入り混じる街、平戸の絶景を堪能して

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