佐田岬半島
眺めて食べて遊ぶ「宇和海ジャーニー」
四国地方の最西端に位置する愛媛県・佐田岬半島は、四国と九州のあいだに横たわる「豊後水道」に突き出した”くちばし”のような形をしていて、半島全体が「伊方町」というひとつの自治体です。
太平洋からの黒潮と瀬戸内海からの海流が流れ込む豊後水道は、文字通り海産物が豊かな海。豊後水道の愛媛県サイド、佐田岬半島に沿って南の海域を「宇和海」といい、しらすや伊勢海老、アワビやなど新鮮な海の幸が伊方町の特産物になっています。
今回は宇和海の恵みを楽しみ尽くすための、絶景&美食スポットをご紹介。半島のシンボル「佐田岬灯台」に、食・文化の新しい発信地である「佐田岬はなはな」、そして地中海のプライベートビーチのような風景に透き通った水を湛える「ムーンビーチ井野浦」。晴れ渡る空がよく似合う佐田岬の”青春感”に、どうぞ焦がれてください。
“半島のシンボル”でアーチ樹木の先に広がる海と夕陽にひと目惚れ「佐田岬灯台」
佐田岬半島を代表する観光スポットのひとつが、半島の先端にある「佐田岬灯台」。1918年4月1日、第一次世界大戦の最中に豊後水道に来航する外国船を監視するために作られて以来100年以上、”守護神”として宇和海と佐田岬半島を見守り続けてきました。灯台には普段立ち入ることが出来ませんが、毎年11月1日「灯台の日」だけは特別に開放されるんです。
駐車場から灯台までの徒歩で約20分間の道のりは、自然の草花に囲まれた遊歩道になっていて、季節を感じながら灯台に向かう楽しみがあります。灯台を入れた海景を撮影したいなら、遊歩道の途中にある「椿山展望台」がおすすめ。上の写真のような絶景が広がっています。
本道に戻り、灯台に向かう途中、樹木が遊歩道の上をアーチ状に覆っていて夏でも木陰で涼しく、灯台への期待感が高まります。トンネルの森を抜けた先に待っている展望は…とっておきの体験になること間違いありません。
2016年に日本ロマンチスト協会と日本財団が主催する「恋する灯台」に認定を受けた佐田岬灯台は、近隣にある三崎高校の生徒さんたちにとって、実際に恋の聖地になっているそう。
そして2018年、100周年を記念して灯台地域の整備が始まりました。灯台自体の改修に加え、遊歩道を年配の方でも歩きやすいように舗装。さらに、佐田岬半島の本当の西端である「御籠島」という離れ小島には大砲のレプリカが設置され、かつて不審な外国船に対峙した砲台が再現されました。
同島へは、灯台広場から下ってコンクリートの橋を渡り、徒歩で立ち入り可能。水平線に近い高さにある島の広場には、灯台を見上げて記念の一枚を撮るためのモニュメントが設置されていて、散策にぴったりです。
また佐田岬の観光サイトでは、海側から灯台を見られるツアー「灯台クルージング」も案内されていて、こちらも人気だそう。伝統を尊重しながらアップデートされた佐田岬のシンボルを訪れない手はありません。
遊歩道で冬に咲き誇る「ツワブキの花」は伊方町の町花で、様々な色の花を咲かせますが、この地域では黄色が多いそう。ちなみに茎は食べられるとか 春には日本原産の「椿」が遊歩道の両脇に咲き誇り、赤が色鮮やかで目を引きます 夏に見られる「ハマカンゾウ」は佐田岬地域の海岸の崖地や急斜面でよく見られる多年草。緑とオレンジのコントラストに夏の高揚感が! 秋には「野路菊」が見られます(写真はイメージ)。葉茎の深い緑と小さな花の白・黄色の調和が”わびさび”
を感じさせます椿山展望台にあるハート型のモニュメント。「恋する灯台」ならではのポイントです 遊歩道を覆う樹木のアーチの出口付近。木漏れ日とチラリと見える青に期待が 毎年11月1日にだけ開放される佐田岬灯台の入り口 展望スペースにある、航路を照らすライト 灯台側から見た御籠島の全景 灯台100周年記念に際し、御籠島の砲台跡にレプリカの大砲を設置 御籠島の広場にある、記念撮影のためのモニュメント。灯台がすっぽり収まるようにかたどられています 灯台クルーズで撮影された一枚。目線と同じ高さに沈む夕日は格別です
2020年にリニューアル! 地域の美食と文化が集まる新しい発信地「佐田岬はなはな」
三崎地区あたりから、先端が南北の2方向に分かれている佐田岬半島。”二股槍”の付け根に位置する三崎港で今、食と文化の新しい発信地になっている施設が、伊方町観光交流拠点施設「佐田岬はなはな」です。
「はな」とは地域の言葉で岬を意味し、”佐田岬を代表する情報発信地になる”という思いがこめられています。2015年に九州から訪れる人の観光案内所と物流センターとして設立された同施設は、2020年5月にてレストランやカフェ、物産店を併設し、リニューアルオープン。コロナ禍の状況にあっても、訪問客数はおおよそ前年の倍を記録しました。
ローカル番組や地元情報誌などで頻繁に紹介され、ここでもっとも話題を集めているのが、特産品の「しらす」。同地域のしらす食品が全国でも有名なのは、ずばり加工や提供が迅速だから。
しらすは鮮度が命で、あっという間に臭いが出てしまう、難しい食材。三崎港付近のしらす加工食品企業は、漁師さんの水揚げをダイレクトに受け入れて数時間以内に鮮度を落とさず加工を済ませるため、格別の風味になるわけです。
上の写真は、同施設のレストラン・しらす食堂はなはなの一番人気メニュー「釜揚げ・生しらす2色丼(¥1,100)」。物産店「しらすパーク はなはな」でも人気のお土産トップ3はすべて、しらすの加工品で、とくに伝統的に甘じょっぱく味付けされた「ちりめん佃煮」は、地元の人も愛する”毎日食”なんだそう。
一方、カフェ「木と樹」では、旬のフルーツをふんだんに使用したジュースが人気メニュー。柑橘王国の愛媛県ですが、やはり伊方町でも柑橘類を中心としたフルーツが特産品のひとつなんです。特に冬はみかん一色になるそうで、訪れた際はぜひご一食を。
三崎港には大分市佐賀関港との連絡フェリーが発着するため、「はなはな」はいわば九州側からの玄関口。観光周遊のためにレンタサイクルを備えているほか、特集3でご紹介する「OJTレジャー」の集合場所になるなど、文化の交流点でもあります。まずは情報収集も兼ねて「はなはな」を訪れ、特産品でお腹を満たし、佐田岬をめいっぱい楽しみましょう!
「佐田岬はなはな」は採光を意識したガラス張りの近代的でスタイリッシュなデザイン。海側(写真左端)には「はなはな」のロゴ文字を立体化して階段状のブロックにあしらったモニュメントがあり、人気のフォトスポットです はなはなのレストラン・しらす食堂の”映える”人気メニュー「【大漁丼】伊勢海老丼(¥4,500、数量限定)」 伊方町で大漁に水揚げされるしらすは、まさに宇和海の恵み。水揚げ→加工→流通のスピードが「しらす=特産品」を実現しています はなはなの物産店「しらすパークはなはな」で人気TOP3を占めるのも、しらす加工品 はなはなのカフェ・木との一番人気メニュー「燻製チキンのバーガー(ポテトとセットで¥1,280)」。豚肉か鶏肉か選べます 木と樹では旬の果物のジュース(グラスで¥500〜)も人気です。写真は伊方町の「辻農園」で作られた濃厚みかんジュース はなはなのすぐ近くには伊方町のフォトスポットのひとつになっている「アコウ樹」が。推定樹齢は600年といわれており、国の指定有形文化財になっています はなはなのある三崎港には豊後水道を挟んで対岸の大分市佐賀関港と行き来するフェリーが1時間に1本ペースで発着 はなはなには観光客の周遊用にレンタサイクル場が併設されています。佐田岬灯台を訪れるための利用が多いそう(自転車で灯台の駐車場まで1時間ほど)
- 「佐田岬はなはな」
- ・住所/愛媛県西宇和郡伊方町三崎1700-11
- 《営業》
- ・しらすパークはなはな(物産店)/[3月〜10月]9:00〜18:00、[11月〜2月]9:00〜17:00、不定休
- ・しらす食堂はなはな/[3月〜10月]10:00〜17:30(L.O.17:00)、[11月〜2月]10:00〜16:30(L.O.16:00)、不定休
- ・カフェ木と樹/09:00〜17:00(L.O.16:30)、水曜定休
- 詳細はコチラ
- ●「アコウ樹」はコチラ
- ●三崎港-佐賀関港間のフェリーはコチラ
- ●レンタサイクルはコチラ
エメラルド色の海と”三日月”が美しい入り江でアウトドアステイ「ムーンビーチ井野浦」
三崎地区から分かれる半島先端の”二股槍”の南側、井野浦地区いちのレジャースポットが、海水浴場とキャンプ場が併設された「ムーンビーチ井野浦」です。
平成8年に三日月型に整備された美しい人工ビーチは、内海のようなロケーションとエメラルド色の澄んだ水質から、さながら地中海にある秘密の入り江のような雰囲気。ビーチの背景に見える稜線には、この半島の風物詩である「風車」が並び立っていて、その景観がゆったりとした空気感を醸し出しています。
同ビーチは年中無料開放(遊泳は7月後半〜8月末日の約1カ月のみ)されていますが、夏季には県内や九州から、たくさんの人が訪れます。併設されたキャンプ場には、夏のハイシーズンのみ管理人が常駐していますが、利用者(最大140人)の予約管理するだけの役割で、施設の利用自体は無料。提供サービスは共同のトイレ・炊事場・シャワーだけのため、しっかり準備をしていく必要があります。
もちろんBBQもOKで、食材は近くのスーパーで購入できますが、おすすめは上でご紹介した「佐田岬はなはな」の物産店。新鮮なアワビやサザエ、さらに伊勢海老までも生け簀で販売されているため、キャンプBBQの贅沢メインディッシュにぴったりなんです。
エメラルド色の海と、遠くに並ぶ稜線上の風車がゆったりとした風景を演出 強風地域である佐田岬には半島の頂上線に計58機の大型風車が設置されていて、景色の名物に。佐田岬半島特集のトップにある写真のように、写真家もこぞって風車を収めに訪れるそう 佐田岬はなはなの物産店に並ぶ生け簀。アワビや魚のアラを販売 伊勢海老も佐田岬地域の特産物のひとつ。生け簀に大漁に集まっている様子は都市部ではなかなか見られません
※価格などの情報は取材時のものです。