長崎県

北松浦半島(松浦)

ここがイチオシ!
北松浦半島

国民的おかずに商標で名実ともに"本場"宣言!

「アジフライの聖地」松浦

「聖地」とは、特定の分野において重要な場所であり、あこがれの場所である(『デジタル大辞泉』/小学館)。地元の名所・名物を立てて「聖地」だと名乗りを上げること自体は、町おこしのスタンダードになりつつありますが、北松浦半島に位置する長崎県松浦市の聖地はひと味違います。

2019年4月27日、友田吉泰市長の「アジフライの聖地」宣言を起点に、PRのためにフリーペーパーを発行したり、グッズを作って現地のみで販売したり、アジフライのモニュメントを市内各所に設置したり、特許庁に商標登録したり(2020年12月18日付)と、…まさに市を挙げての総力戦なんです。

もちろんそのベースには、質量ともに充実したアジの漁獲高があります。水揚げ量で日本一を誇る「松浦魚市場」はアジ流通の要。仲卸業者を通じて西日本を中心とした各地にアジを供給しています。そして地元では、もっとも鮮度がいい状態で調理され、最高に美味しいアジフライがいただけるという特権が。

ちなみにページトップ1枚めの写真は、同市内にある食事処 海道のアジフライ定食(¥1,000)。肉厚の身を噛めば脂がじゅわっと口内に広がる逸品で、11時の開店狙いでファンが詰めかけるほどの人気ぶりです。

新鮮なアジの良質な脂と市民の情熱がギュッと詰まったアツアツの新生ムーヴメント、”胃もたれ知らず”の松浦アジフライワールドを、お腹いっぱいご堪能あれ!

アジ水揚げ量は日本一の1万7000トン超「松浦魚市場」2018年のリニューアルで来客急増中

昭和54年に開設された松浦魚市場は、全国で有数の水揚げ量を誇る一大水産拠点で、アジ・サバを中心とした”青魚”に強みがあります。とくにアジは「マアジ」を中心に、2011年、2015~2017年、2019~2020年と10年で6回も日本一の水揚げ量を記録し、直近の水揚げ量は1万7431トン。

なかでも五島・対馬海域で4月~8月に漁獲された100g以上のマアジは、対馬暖流にもまれ脂ノリがよく、「旬(とき)あじ」としてブランド化されています。同市場はサバ・ブリなども同様に松浦ブランドをもつ、日本有数の”タレント漁港”なんです。

松浦魚市場は、東京・豊洲市場のオープンと同年の2018年6月にレストランや物産店が併設された「事務所棟」をリニューアル。一般来客がメインの「大漁レストラン 旬(とき)、市場で働く人の胃袋を支える「西日本魚市食堂」、鮮魚と加工食品を販売する物産店「旬市場(ときいちば)、そして後ほど詳しくご紹介する”ご当地限定販売”の「アジフライグッズ」が人気を集め、観光統計の来客数が2017年の約80万人から、2019年には約93万人に急増しました。現在では、12時を過ぎるとお食事処2店のアジフライが売り切れることもあるそう。

そして2021年4月には、荷捌き所などの水産施設もリニューアル。世界的衛生基準であるHACCP(ハサップ)の考え方を取り入れた衛生管理を徹底するため、「高度衛生化閉鎖型施設」が建てられました。水揚げから出荷までを一貫して閉鎖型の施設内でおこなうことにより、鳥害や外気を遮断。場内を3種類の専用水で殺菌して清潔な環境を保ち、アジをはじめ水産物の衛生状態を高レベルで保っています。

閉鎖型施設内には幅が約40m・奥行き約20mの巨大な「魚体選別機」がダイナミックに設置されています〈写真・上〉。ラインに乗ったアジは、ベルトコンベアで魚体を選別されて大きさごとにレーンに分けられ、自動でセッティングされるコンテナケースに投入・移送。途中で作業員による検品を経て機械で計量され、一定の重さになったら自動で箱詰めされます。この一連の工程すべてが、徹底した衛生管理下でおこなわれていて、食の安心安全を守っています。

  • 「松浦魚市場」
  • ・住所/長崎県松浦市調川町下免695
  • ・営業/
    [市場]3:00~17:00
    [大漁レストラン 旬]6:00~14:00
    [西日本魚市場]5:00~14:00
    [旬市場]日曜8:00~14:00、その他9:00~14:00
    ※休日は土曜ほか。
  • 詳細はコチラ

ユニークな「PR冊子&公式グッズ」でアジフライに”かわいい”ブランディング

「アジフライの聖地」の発起人が松浦市長なら、ムーヴメントとして普及させるのはアジフライ連携店と同市職員みなさんのお役目。とりあえず”ゆるキャラ”を…とはならず、松浦市はユニーク街道を進みます。「マップを作ろう!」という市長の鶴の一声により、調査・飲食店へのアジフライ提供交渉・制作に1年をかけて完成したのが、聖地をPRする小冊子型フリーペーパー『松浦アジフライマップ(meets!まつら)』〈写真・上〉。現在までに計4号発行されている同紙は、「松浦市福岡事務所」の所長以下、創意に富んだプロモーション推進委員のメンバーにより制作されています。

実は、”聖地宣言”前に発行された第1弾は、縦長でじゃばら折りの紙に地区別のアジフライ提供店が載った、いわゆる普通のパンフレットでした。それを進化させたのが、福岡事務所のメンバーです。福岡を中心に活動するイラストレーター「NONCHELEEE(ノンチェリー)さんのユニークなイラストを軸に、アジフライ提供店だけはなく、各号に読み物特集を載せた小冊子としてリニューアル。観光パンフレットの枠を超え、読んで楽しい”エンタメフリーペーパー”として、地元のみならず観光客にも好評です。その高いエンターテインメント性は公にも認められ、松浦アジフライマップはこれまで以下の計4賞を受賞しています。

  • ・日本タウン誌・フリーペーパー大賞2019/自治体PR部門優秀賞
  • ・第1回地域プロモーション大賞/ふるさとパンフレット大賞優秀賞
  • ・日本地域情報コンテンツ大賞2020/大賞(自治体)、自治体PR部門優秀賞

バックナンバーは松浦市のホームページでも公開されていますが、新刊が出たときに現物を入手できるのは、松浦駅や市役所などの公的施設、道の駅、観光物産協会、アジフライ連携店、そして事務所のある福岡市内で数カ所。旅行で訪れた方、近隣にお住まいの方は、ぜひゲットしてみてください。

さらに、松浦市が仕掛けた”第2の矢”が「アジフライグッズ」です。気になるラインナップは、Tシャツ、ポロシャツ、トートバッグ、ピンバッジといったファッション系のアイテムに加え、クリアファイルにステッカー、そしてマスタード容器と見紛う黄色いタルタルソースのディスペンサーの計7種類を展開。

2019年のGWから9月末までの5カ月間には、市内の協力飲食店29店のうち13店舗のスタンプを集めると「アジフライカラー限定スペシャルTシャツ(非売品)」をプレゼントするという、アジフライ食べ歩きのスタンプラリーイベントも開催されました。

アジフライグッズの最大のポイントは「現地に足を運んでほしい」という思いから、通販をしていないこと。いつでも買えるのは、上でもご紹介した松浦魚市場の「旬市場」か、松浦駅近くの志佐町商店街にある同市で今もっとも話題のおしゃれカフェ「Matsuo Nouen+Coffee」だけです。

ちなみにMatsuo Nouen+Coffeeでは、”都会でしか味わえない”ような本格コーヒーと、”都会では味わえない”松浦市産の旬の果物を使ったスムージー、そしてアジフライサンドが人気メニュー。スムージーの一番人気は3~4月に提供される「いちご豆乳スムージー」だというので、同時期に旬を迎えるアジのグルメ、そしてグッズの”一石三鳥”を狙って、春休みまたはGWの旅先の候補にいかが?

  • 松浦アジフライマップ」「アジフライグッズ」コチラ
  • 「Matsuo Nouen+Coffee」
    ・住所/長崎県松浦市志佐町浦免1252
    ・営業/[月・火・木・金]11-18時、[土]11-17時、[日・祝]12-17時
    ・休み/水曜
    季節のメニューなど詳細はコチラ

聖地をおやつにも! 松浦市と製菓店のコラボで実現「アジフライお菓子プロジェクト」

フリーペーパーとグッズに続き、松浦市は「アジフライの聖地」施策の”第3の矢”も仕掛けています。その名も、「アジフライおさんじ」。「おさんじ」とは、”お三時”のひらがな表現で、いわゆる「おやつ」のことです。

江戸時代の時間の数え方では、午後2時頃から4時頃までの時間を「八つ刻(やつどき)」といい、当時は一日二食の食習慣のなかで「小昼(こびる)」という間食をとる時間だったことから「おやつどき=おやつ」と呼ぶようになりました。現在の「おやつ」はその名残ですが、明治5年に時刻制度が現在の24時間制に変わったとき、全国で松浦市を含むいくつかの地域では、午後の間食を「お三時(おさんじ)」と呼称変更。そうした経緯から、プロジェクト名に採用されたというわけです。

プロジェクト自体は、加入者となる地元の製菓店が松浦市産の作物を使って作ったお菓子を「松浦のおさんじ」として相互補助をしながらブランディングする、という広義のもの。そこに松浦市が、アジフライの聖地ブランドを掛け合わせました。

具体的には、プロジェクト加盟店に市から声がけをし、参画店には”アジフライおさんじセット”が提供されるというシステムです。セット内容は、(1)お菓子の金型、(2)アジフラインの焼印、(3)専用紙袋、(4)商品タグの4点。製菓店にとって、とくに(1)(2)は新商品を開発する際にコスト面で大きな障壁になるため、まさに大盤振る舞い。同市の本気度がうかがえます。

現在は7店が参画を表明し、うち5店で「アジフライおさんじ」が販売されています。上の写真は、百枝製菓舗の「アジフライ焼き菓子(¥162/1個)」「アジフライ印 丸ボーロ(¥86/1個)」で、赤字のプリントがされている紙が松浦市が提供している商品タグ。同店を含め5店とも、アジフライおさんじはよく売れているそう(ほかの4店は下の画像を参照)。

それぞれの店舗のほか、松浦魚市場の物産店「旬市場」や道の駅、さらには県内イベントでも出展販売しています。J2リーグに所属する地元のプロサッカーチーム「V・ファーレン長崎」の試合会場で販売したときは、キックオフ前に売り切れになりました。お腹もお土産も、”アジフライ一色”に染まりきるのも味なもの。聖地への期待を胸に、絶景スポットとしての魅力を次のページの記事でたっぷりお届けします。

  • 「松浦おさんじプロジェクト」
    店舗一覧はコチラ


※価格などの情報は取材時のものです。

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