津軽半島
津軽海峡「龍飛岬」
紅白歌手・石川さゆりの代表曲にして、国民的名歌である『津軽海峡・冬景色』。東京・上野駅から夜行列車で青森駅にたどり着き、津軽海峡を渡る連絡船に乗った”私”が泣きながら眺めるのが、青森県・津軽半島を代表する名所「龍飛岬(たっぴみさき/正式には龍飛崎[たっぴざき]という)」です。
北海道の南端・白神岬や、北海道新幹線が走る青函トンネルの出口に当たる福島町を背に、視野いっぱいに広がる津軽海峡はまさに孤高の絶景。さらにこの地域には、津軽海峡以外にも味わい深い海景や、まぐろやウニをはじめ地元で獲れる海の幸をふんだんに使った美食の数々があります。
2016年に新青森駅〜新函館北斗駅間の新幹線が開通してアクセスが格段によくなった津軽地域には、奥津軽いまべつ駅からレンタカーか、ローカル線に乗り換えて4駅先の三厩駅(みんまやえき)から出る外ヶ浜町営バスで訪れるのが基本ルート。秋が訪れて空気が澄み始めるこの時期、しっとり旅愁を感じに行きませんか?
『津軽海峡・冬景色』の舞台には、心のもやを晴らす雄大な海「龍飛埼灯台」
龍飛崎にはいくつかの海景ポイントがあり、もっとも人気なのが「龍飛埼灯台」。海辺の高台から見下ろす形で、津軽海峡の雄大なオーシャンビューを楽しめます。見どころは180度の視界に広がる海に浮かぶ「サンライズ/サンセット」や、『津軽海峡・冬景色』に歌われた連絡船など「船舶の往来」、そして「白波」。
龍飛は風力発電用の風車が壊れるほど風の強い地域で、吹き立つ白波が孤高の美しさを演出しています。さらに空気が澄んだ晴天日には、対岸の北海道・松前半島がくっきり見えて、干されている洗濯物が見えるほどの透明度だそう。
観光客は昼に訪れることが多いそうですが、地元の人のおすすめは夕暮れどき。沈みゆく夕陽の壮大さが、落ち込んだ気分や”心のもや”を払ってくれるので、心のデトックスにぜひ。
近辺には「津軽海峡冬景色歌謡碑」(ページトップのスライド写真1枚め)や、海鮮料理が美味しい食堂に土産物店や温泉ホテル。さらに歩行者しか通れない日本で唯一の「階段国道」を下って行ける龍飛漁港と”小さな出島”帯島など、観光スポットが集まっています。時間ごとに変わるオーシャンビューを軸に、一日かけて散策してみては。
龍飛埼灯台(写真左上の白い建物)の周辺には、すぐそばに食堂・土産物店があるほか、「津軽海峡・冬景色歌謡碑」(中央のバスロータリーの道路挟んで向かい側)や、龍飛漁港と帯島(右上のエリア)、その手前にある「ホテル竜飛」など、ひと通りの観光施設が揃っています 陽光に映える真っ白な龍飛埼灯台自体もフォトスポットに 地元の人も訪れる龍飛崎の夕陽(写真は龍飛漁港周辺からのもの) 電灯によって宵闇に映える帯島。ライトアップされたアミューズメント施設のよう。写真は周辺で一番高所にある「龍飛崎展望台」(龍飛崎中心地よりやや南に位置)から撮影されたもの 津軽地域の名物のひとつが「マツカワカレイ」。こちらはバスロータリーのすぐ隣にある「食堂たっぴ」で提供されている漬け丼 龍飛埼灯台の駐車場に併設されている土産物店と、ウニ丼が有名な食堂「レストハウス竜飛 寿恵盛屋」(左上の建物) テレビをはじめメディアに数え切れないほど登場している津軽地域の有名人「たっぴやのかっちゃ」。「たっぴやのお母さん」という意味の津軽弁で、土産物店「たっぴや」のおかみさんが悪天日以外はほぼ毎日、津軽海峡冬景色歌謡碑の道路を挟んだ向かい側で青空販売をおこなっている 津軽海峡冬景色歌謡碑を東に100mほど進んだ並びにある「ホテル竜飛」。津軽海峡とつながったように感じるという露天風呂がおすすめ 津軽海峡冬景色歌謡碑を西に50mほど進んだ並びにある“岐路”を海側に下ると、日本で唯一と言われる「階段国道339号」が。徒歩でしか通ることのできない世にも珍しい国道なのです 階段国道を下った先には龍飛漁港と帯島が広がっている。帯島の赤い鳥居はパワースポットとして人気だそう 漁港のすぐそばにある帯島の波止場は釣り人たちの人気スポット
「龍飛崎シーサイドパーク」で眺める日本海は”夕陽と目を合わせる”鎮魂スポット
龍飛崎を擁する青森県・外ヶ浜町で見られる2つめの代表的な海景が、日本海。すぐそばの津軽海峡とは全く違う海模様なんです。津軽海峡は様々な海流が交わるポイントで、穏やかな流れをたたえていますが、日本海は高い波が特徴の荒ぶる海。
「龍飛崎シーサイドパーク」はそんな津軽半島の日本海に面した、コテージ6棟・バンガロー4棟からなるアウトドア宿泊施設です。同施設の最大のみどころは目線の高さにある水平線に沈みゆく夕陽〈写真・上〉。龍飛崎では高台からサンセットを”見下ろす”のが醍醐味でしたが、こちらは夕陽と”目を合わせる”視点なので、ひと味違います。
南北に抜ける道が通っているものの主要道ではなく、ほかの観光施設ともルートを隔てた谷間にあるため、とても静かなのも◎。友人や家族でBBQや自炊を楽しみながら、沈む太陽と静かに聞こえる海の声に癒やされる、県内有数の鎮魂スポットなんです。
ひとつだけご注意いただきたいのは、周囲に食料や日用品を買えるお店がないので、お買い物は道中で!
道の構造上“離れ小島”のようにたたずむ龍飛崎シーサイドパーク 「ケビンハウス」と名づけられたコテージは斜面に扇状に立つ コテージの寝室は子供心をくすぐる2段ベッド コテージより少しサイズの小さいバンガローも
- 「龍飛崎シーサイドパーク」
- ・住所/青森県東津軽郡外ヶ浜町三厩龍浜
- ・営業期間/4月25日〜11月10日
- 詳細はコチラ
源義経は平泉を生き延びて…足跡を祀った 「義経寺」に寄り添う穏やかな港町
歴史好きが熱を上げる、鎌倉時代を代表する人物といえば源義経。平家との戦いで兄・源頼朝を軍功で支えた義経は、尽くしてきたはずの兄に裏切られ、奥州(現・岩手県)平泉で追い詰められて自害…というのが歴史の教科書に描かれた定説。でも現代では、「平泉から生き逃れていた」「大陸に渡った」など、さまざまな異説が論じられています。そして、外ヶ浜町・三厩地区にある「龍馬山 義経寺」には、こんな伝説が。
頼朝の平泉侵攻から逃れたものの、荒れ狂う津軽海峡に行く手を阻まれた義経。そばにあった岩場によじ登り、守り神にしていた小さな観音像に三日三晩祈り続けたところ海は静まり、足場の岩の洞穴に3頭の「龍馬(羽の生えた馬)」が現れ、無事に海を渡ることができた。
その500年後にこの地を訪れた円空という仏師が、義経の観音像が岩の上で光っているのを見つけ、自身が流木で彫った仏像のなかに納めて、小さなお堂を建てて祀ったのが義経寺の始まりとされています。
また、義経がよじ登ったとされる岩は「厩石(まやいし)」という名所として義経寺の目の前に鎮座し、厩石から500mほど北には”無事に海を渡れるように”と着けていた兜を海神に捧げたといわれる「甲岩(かぶといわ)」も現存。三厩(みんまや)という地名も、三馬屋(みうまや)が転じたもので、厩石の伝説から起こったといいます。もちろん真相は神のみぞ知るところですが、海の向こう北海道・平取町にも「義経神社」という義経スポットが。
さて、厩石から南側には「三厩漁港」を中心に穏やかな港町の風景が広がっていて、高台にある義経寺から見られる眺望として、北の雄大な津軽海峡とともに人気だそう。さらに近辺にあるお店では、お寿司やまぐろ料理をはじめ、美味しい海鮮料理が味わえます。誰もが知る偉人の伝説に思いを馳せながら、ゆったり海の幸を楽しんでみてはいかがでしょう。
海側から見上げた義経寺。高台の上にあるので眺めがいいんです 階段を下った目の前には伝説の発祥地「厩石」が 山側にある義経寺の入り口・山門 観音像が納められた「円空仏」を祀る、義経寺の観音堂 厩石から少し北にある「甲岩」 厩石から南に1kmほど行けば「よしつねの湯」という浴場も よしつねの湯から三厩駅方面に向かうと「伊藤商店」というスーパーが。こちらは龍飛埼灯台のそばにある「レストハウス竜飛」の系列店で、同じまぐろメニューが味わえる。写真はまぐろの漬け丼と唐揚げ 厩石の脇には「松前街道終点の碑」が。松前街道はこの津軽半島特集の3記事めにも登場するので、ぜひチェック! 北海道平取町にある「義経神社」。義経公は伝説どおり無事、北へ渡れたのかも!?(写真は同神社のFacebookより)
- 「龍馬山 義経寺」
- ・住所/青森県東津軽郡外ヶ浜町字三厩家ノ上76
- ・営業時間/9:00〜16:00(閉門)、年中無休
- 詳細はコチラ
- 「よしつねの湯」はコチラ
- 「伊藤商店」
- ・住所/青森県東津軽郡外ヶ浜町三厩東町65-4
※価格などの情報は取材時のものです。