佐田岬半島
映画のワンシーンに入り込んだ気分になれる佐田岬半島の超絶景
愛媛県の観光地といえば、松山市にある道後温泉や松山城、宇和島市にある南楽園、今治市と広島県の尾道を結ぶしまなみ海道などが有名ですが、もう少し足を延ばすと、見事な海景や、文明開化の匂いが漂うレトロな街並みを楽しむことができます。JALふるさと応援隊の愛媛県担当・飯田さんと自然豊かな佐田岬半島の観光へ繰り出しました。
四国最西端の地にそびえ立つ白亜の佐田岬灯台
四国最西端の景色が佐田岬灯台で見られるということで、八幡浜市から一路西へ。松山道大洲ICから70キロメートルの位置にある灯台への道のりは、右手に瀬戸内海、左手に宇和海の絶景を両脇に眺めることのできる絶好のドライブコースです。国道197号線に設置されている「佐田岬メロディーライン」(路面上を一定の速度で走行すると音楽が流れるように細工をされた道路)の奏でる童謡「うみ」の音色が旅情を誘います。
そして約2時間の道のりをかけてやってきたのが、佐田岬灯台公園。車で入れるのはここまで。公園の看板には「灯台まで1800mです。がんばりましょう!」の文字が。ここから先は、徒歩で山道を進みます。
道中は起伏の激しい山道ではありますが、木々が茂っており、海風が爽やかに吹き抜けていきます。歩くこと約30分、額にうっすら汗が浮かべる飯田さんの目に飛び込んできたのは、圧倒的なオーシャンビューでした。
灯台からさらに進んだところにある御籠島展望所。灯台型のモニュメントから灯台を覗いて見ました 崖の上にそびえ立つ白亜の灯台の姿に飯田さんも感激 御籠島展望所からの景色は、夕景も見事だそう
1918年(大正7年)に初点灯した白亜の佐田岬灯台は、豊後水道と伊予灘を往来する船舶の道しるべとして、いまも現役灯台として活躍しています。設置から100年目を迎えた2017年には、国登録有形文化財に登録。歴史のロマンが漂うこの灯台は「恋する灯台」「四国八十八景」にも選出されており、そこに立っていると映画のワンシーンに入ったような気持ちになれます。
佐田岬灯台からさらに5分ほど先端へ進むと、御籠島展望所が。名実ともに、ここが四国の最西端となっており、崖の上に立つ佐田岬灯台を撮影できるビュースポットになっています。西側を眺めるとキラキラと輝く海の先に、大分県・国東半島のシルエットが。飯田さんは「この景色を観たら、山道を歩いてきた疲れが吹き飛びますね」とポツリ。ここに辿り着くまでの苦労こそ、忘れられない旅にする最高のスパイスなのかもしれません。
獲れたての魚介も堪能できて、お土産選びも楽しめる八幡浜港
山の斜面には、広大なみかん畑が広がっています 八幡浜港からは大分に続くフェリーが出港
佐田岬灯台から眺めた大分県に行くには、八幡浜港からフェリーで渡るルートがあります。九州北部へ訪れたい方へおすすめなのが別府港着のルート。湯けむり情緒溢れる別府や湯布院などへのアクセスに便利です。大分南部や宮崎を巡りたい方へは臼杵港着のルート。昔ながらの城下町や国宝の臼杵石仏などの観光スポットを楽しむことができます。
フェリーに乗らない方にも、八幡浜港はぜひとも立ち寄ってほしいスポット。2022年の4月にリニューアルされたフェリーターミナルビルの4階展望デッキからは、往来するフェリーや海に沈む夕日、みかんの段々畑の眺望を楽しむことができます。八幡浜市は、柑橘王国・愛媛県全体の51.1%の生産量(令和2年度)を誇る有数のみかんの産地。秋頃から黄色に色づくみかん畑の景色は必見です。
八幡浜港はグルメも豊富。道の駅・八幡浜みなっとには、地元で獲れた新鮮な魚介類がズラリと並ぶ「どーや市場」、市場直営の海鮮グルメを味わえる「どーや食堂」、充実したお土産コーナーと愛媛スイーツが堪能できる「アゴラマルシェ」などがあり、運転に疲れたドライバーを癒す憩いの場となっています。
あっさりとして野菜がたっぷり!ヘルシーなソウルフード「八幡浜ちゃんぽん」
創業1962年創業の「ちゃんぽん亭イーグル」のちゃんぽん 「清家食堂」のちゃんぽんは野菜、かまぼこ、卵焼きなど具だくさん 八幡浜市中心にある八幡浜駅。市内の約40店舗の飲食店でちゃんぽんが提供されている
ちゃんぽんといえば、長崎県というイメージがあるかもしれませんが、八幡浜ちゃんぽんは地元のソウルフードとして市民に愛されています。八幡浜市は、四国の西の玄関口と言われており、古くから九州や関西地方との交易が盛んな商業都市として栄えてきました。本場中国の食文化が海を渡って伝わり、日本各地を経由しながら八幡浜の食文化と融合して生まれたのがこの八幡浜ちゃんぽんなのです。食堂やレストラン、カフェや居酒屋など40を超える店舗で提供される定番料理となっています。
長崎ちゃんぽんは豚骨ベースが主流ですが、八幡浜ちゃんぽんは、鶏ガラ、カツオ、昆布で出汁をとったあっさり風味が特徴です。具材はたっぷりの野菜や豚肉以外に、八幡浜の特産品である蒲鉾やじゃこ天が入っているところもこの土地ならではといえます。
くずし鳥津社長の鳥津康孝さんおすすめの「ちゃんぽん亭イーグル」で八幡浜ちゃんぽんをいただいた飯田さん。「野菜がたっぷり摂れてヘルシーですね。あっさりとしたスープではありますが、豚肉や野菜の旨味がしっかりと溶け込んでいるので、とても満足感があります」
“四国で初めて電灯が灯った街”保内町のレトロな街並みを散策
宮内川沿いの「もっきんろーど」。歩く場所によって木琴を叩いたような心地よい音が鳴る 川沿いの遊歩道を進むと文明開化の歴史が漂う「旧東洋紡績赤レンガ倉庫」
八幡浜駅から車で約15分。保内町川之石地区にはレトロな街並みが広がっています。いまではとても静かなこの地域ですが、明治時代には紡績業で栄え「愛媛に最初に銀行ができた地」「四国で初めて電灯が灯った地」としても知られるハイカラな街だったのです。
この街の中心部を流れる宮内川沿いに造られたのが「もっきんろーど」。八幡浜市立保内中学校の側の金比羅橋から、美名瀬橋まで伸びる約350メートルの遊歩道の脇には、旧東洋紡績赤レンガ倉庫があり、この街の歴史を感じることができます。魚が泳ぐ涼やかな川に目を奪われながら、足を踏み出すと、カランコロンと美しい音色が響いてきます。もっきんろーどの由来は、この道を歩くと木琴のような軽やかな音を奏でることから名付けられました。
「川沿いに伸びる一本道は、足元の音楽も相まって歩くのが楽しくなる散歩道です。川の護岸は、矢羽根積(細長く割った石を段ごとに交互に傾斜を設けながら積んでいく方法)という技法で石が積み上げられていて、規則的な模様がとてもきれいでした」(飯田さん)
「旧川之石浦庄屋二宮家住宅」。住居を囲む石塀は国の登録有形文化財 巧みな技術で積み上げられた石塀は全長約30メートル 大正時代に創業したカワイシ醤油の工場。看板がレトロで可愛い
もっきんろーどを後にして、さらに保内町の街のなかへ。この地域は明治時代に愛媛県の近代化をリードしてきた街であり、当時の最新技術を取り入れた洋風建築や贅を尽くした屋敷などが多数残っています。それらが国登録の有形文化財となり、街中に点在しているのです。
飯田さんと訪れたのが「旧川之石浦庄屋二宮家住宅石塀」。二宮という庄屋宅の外塀が国登録有形文化財になっています。石塀の材料となっているのは、宮内川の護岸にも使われていた緑泥片岩。この地域一帯で、産出され、建築・土木資材として広く用いられてきたものです。「矢羽根積」と似た技法で組まれていますが、旧川之石浦庄屋二宮家住宅石塀は、それよりもさらに古い技術で積まれており、同じような石塀を作ろうとしても現在では不可能だと言われています。
他にも「愛媛蚕種」という現在も操業する蚕の卵を製造販売する会社や「内之浦公会堂」という洋風建築の建物などの有形文化財がありますが、飯田さんが足を止めたのは、「醤油味噌米酢」というレトロな文字が目を引くカワイシ醤油。創業は1919年(大正8年)で、現在も場所を変えることなく製造をおこなっています。四国ならではの甘めに作られた醤油は、地元民から絶大な人気を集めています。
「カワイシ醤油が道の駅で販売されているのを見て気になっていたので『ここに工場があったんだ!』と思わず足を止めてしまいました。建物のレトロな魅力というのはもちろん感じますが、いまもこの場所で歴史を守りながら営業しているというところに『街が生きているんだな』と感じました」(飯田さん)
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撮影/吉澤健太 取材・文/小石原悠介