江能倉橋島
誰もが驚き誰もが喜ぶ「ぽんカル」っていったい何⁉
広島・呉市音戸町の海沿いにポツンと建つ小さな工場。そこで澤野敏昭さんがひとつひとつ手作りで作っているおつまみ、それが「ぽんカル」です。小さな窓からは目の前の海が見える作業場で、澤野さんがたった一人、手作業で作っているという「ぽんカル」は、天然素材100%、無添加、“自然膨化発泡食品”とのこと。いったいそれは何なのか、秘密に迫りました。
PROFILE
澤野敏昭さん
ねっかけんサワノ社長。「ねっかけん」という社名は、漢字では「熱科研」、熱を科学的に研究しようという意味。平成3年、(協)お好みワールド(オタフクソース㈱を中心に15社程度)が、アジア大会に向けお好み焼きを売る計画にテスト機を作ることで参加、起業。平成14年、ぽんカルの特許申請、平成23年に特許取得。平成19年、知財マッチングフェア2007の優秀出展社3社のうち1社に選定される。第8回ひろしまベンチャー助成金の奨励賞(銀賞)。
広島・呉の”発明家”が開発した新感覚おつまみ「ぽんカル」の正体
ぽんカルは現在5種類 透けてしまうほど薄いのです
小さな建物のドアを開けると、その中は澤野さんのDIYによって、使いやすく整えられています。その奥が作業スペース。機械2台と冷蔵庫、冷凍庫、水場というそのシンプルな佇まいに「本当にここで作っているの?」と誰もが驚くことでしょう。ひとつひとつ手作りをしている「ぽんカル」は、透かしちりめん/ピリ辛透かしちりめん/透かし貝柱/透かし海老/ピリ辛透かし海老、と全部で5種類。名前のとおり、持つと透けるくらいに薄いのが特徴です。
広島の海の恵みを、まるで魔法のように加工する技術
オリジナルの機械でプレスします 干しエビを1つ乗せて 1秒弱プレスするとポンッと弾け あっという間に「ぽんカル」が完成。
そのあまりにもシンプルな佇まいの機械に、上田さんも「これで本当にあのお菓子ができるんですか?」と興味津々。さっそく工程を見せていただくと、一瞬にしてひとつでき上がりました。プレスしている時間はあっという間。取材スタッフ全員が茫然とするほどのスピードなので、何度か繰り返して見せていただくことに。機械を開き、干しエビを一つだけ乗せて、ぎゅっとプレスすると手品のようにぽんカルが完成します。何度見せてもらっても不思議。
素材が命。選び抜いた「音戸ちりめん」を使用。 「このまま食べても美味しそう」と上田さん。 干しエビは一尾ずつ。 旨味の強い干し貝柱が人気です。
「シンプルに作っているからこそ素材が重要です」と笑顔で話す澤野さん。海に囲まれた江能倉橋島半島地域では素材に困ることはありません。車で走っていると、牡蠣の養殖もよく目にし、海はどこまでも美しく穏やか。試作を重ねながら開発したという機械が、その海の恵みの持ち味を最大限生かしてくれます。プレスした時にどんな形状になるのか何度も試した結果、各素材それぞれのベストなサイズ感や塩気を熟知している澤野さんは、素材選びから慎重なのです。
発明家でもあり、食のプロでもある澤野さん
自作した「ぽんカル」の機械、その名も「ぽん機っ機」。 温度表示なども本格的。 「ぽんカル」の独自技術で特許を取得。 若き研究者時代の澤野さん。 オゾン発生装置によって工場内を清潔に保っている。
入口のドアが開くとブザーが鳴り作業中の澤野さんに来客を知らせてくれたり、電気系統のバッテリー部分は木の板で隠してあったりと、その小さな工場の中は澤野さんの手作りのものばかり。ぽんカルの機械ももちろん自作。食品メーカーで開発に携わりながらも、結婚後は奥様の家業である鉄工所を手伝っていたという、食&鉄工の両方向での経験が生かされ、「もっともっと美味しいものが作れるはずだ」と確信した澤野さんはテストを繰り返しながらこの機械を開発。特許の申請も発明協会等の支援を受けながら自分一人で行ったそう(一般的に特許の申請は途方もなく大変です)。「最初はガスを利用していましたが、温度変化が急なので現在の電気式に落ち着きました」と話す澤野さん。機械だけでなくぽんカルのラベル製作まで、なんでも自作してしまいます。
「『もっとこうだったらいいのに』『こんなものがあったら便利だな』など考え出すと、自分で作ってしまうんです」という言葉どおり、現在のようにひとつひとつぽんカルを手作りするのではなく、一度に複数枚作ることができる機械開発にもチャレンジしたことがあるそう。それにはあまりにも大きな金額が必要とのことで断念したそうですが、次のアイデアはもう進行中でまだ秘密とのこと。
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※価格などの情報は取材時のものです。
撮影/中川正子 取材・文/柿本真希