北松浦半島
「福島サンセット」
九州本土と5つの有人離島から成る松浦市は、伊万里湾(内海)と玄界灘(外海)、2つの海から恵みを受けています。なかでも離島のひとつ「福島」は観光資源が豊富な、いわば”リゾートアイランド”。伊万里湾の中心に浮かぶ同島へは、福岡市中心部からレンタカーで1時間強・有料道路通行料950円というのがもっとも便利なアクセス方法。今回は福島が誇る、美しいサンセットビューをご紹介します。
リゾート施設が提供する夕陽クルーズ、”日本の棚田百選”と”日本夜景遺産”をダブル受賞した観光名所、そして海水浴場隣接のキャンプ場――それぞれのスポットから望めるオレンジ色の”天然アート”には、都会の喧騒で疲れた心がしみじみ癒やされること間違いナシです。さあ、”夕陽が染めるカンバス”福島にいらっしゃい。
上質なリゾート施設で”海辺グランピング”…夕陽専用のクルージングで贅沢気分「シーグラン」
松浦市の行政区域である福島ですが、陸路でつながっている先は佐賀県の伊万里市。1967年に島の南東部と伊万里市とのあいだに「福島大橋」が架橋されました。大橋を渡って車でわずか5分ほど、福島の東端部にあるのが、ワンランク上の贅沢グランピングが楽しめる「Glamping Village SeaGrand(以下、シーグラン)」です。
計7棟のキャビンとカフェ棟から成る同施設は、2020年6月にオープンしたばかりの高級リゾート。キャビンはすべて2名用で、3棟の”独立タイプ”と、2×2棟のファミリーユースもできる”デッキ共用タイプ”があります。
戸外にはリゾートならではのハンモックもあり、ぽかぽか日差しと穏やかな潮風を感じながらお昼寝…なんて、おとぎ話のような贅沢も。夜は一転、周囲には明かりも交通も少なくなるので、ほんのりライトアップされた施設内の光を頼りに、沈みゆく夜をゆったり楽しめます。
シーグランはグランピング施設だけに、全キャビンに備えられたウッドデッキで楽しむBBQが名物。食べごたえのあるステーキ肉と新鮮な海の幸の両方が楽しめる「基本コース」がランク別に4つと、季節ごとの食材が味わえる「特別コース」や「魚介コース」、さらにはアニバーサリー・イベントに合わせたカスタマイズプランにも対応してくれます。BBQは日帰り利用もできますので、九州北部に在住の人なら休日のランチパーティにも◎。
そしてもうひとつ、シーグランには特筆すべき魅力があります。それが施設発で楽しめる数々のレジャープラン。近年、女性に人気のマリンスポーツである「サップ」や「シーカヤック」に、用具もエサも揃っている「釣り具レンタル(¥2,000/2時間)」、そして今回取り上げる「サンセットクルージング」です。すべて宿泊客のみのメニューですが、16時のチェックイン時間前でも利用できます。
クルージングは約2時間のゆったりとしたショートトリップ。昨年末に公開した佐賀県東松浦半島の特集でご紹介した伊万里湾に浮かぶ48の島郡「いろは島」をめぐり、佐賀県唐津市と松浦市鷹島を結ぶ「鷹島肥前大橋」越しに夕陽を眺めながら〈写真・上〉、橋をくぐって雄大な玄界灘を望むというのが基本コースです。
お値段は2時間で1人7,000円とオプションレジャーとしてはお高めですが、ここで体験できるのはいわば”心のデトックス”。この施設は島の東側にあるので、残念ながらキャビンにいても、この美しい夕陽は望めません。シーグランを訪れたらクルージングしないのはもったいない!
ちなみに2021年、松浦市がワーケーション調査業務のために東京のコワーキングスペース提供企業と協力し、契約9社を対象にシーグランでモニターツアーをおこなったところ、大好評だったそう。長いお休みを取って訪れる先としてはもちろんですが、休暇の取得が個人裁量になりつつある今だからこそ、時代を先取りしてハイシーズン以外の「リゾートワーケーション」利用をしてみては。
シーグランの全景。伊万里湾の澄んだ水質もあって、ジブリ映画『紅の豚』に登場するようなプライベートビーチの雰囲気! キャビンとウッドデッキにはバリで買いつけた家具と調度品でこだわりの空間づくりがなされ、徹底したリゾート感を演出 戸外にはハンモックのほかに、ブランコやパラソル、ビーズクッションなどの共用品が設置されていて、開放的な気分でだら~り寝そべって過ごせます 大きなステーキ肉を網の上に乗せてガス火でじりじり焼く時間は、期待感が高まる最高のひととき 旬の食材を楽しめる「魚介コース」では伊勢海老・カキ・サザエなど新鮮な海の幸が提供されます 夜のシーグランは”大人の隠れ家”そのもの。戸外の設備で焚き火を前にシャンパンの栓を抜けば”夜の部”の始まりです 女性人気の高い「サップ」は1人1時間あたり2,500円。マリンシューズは要持参です いろは島めぐりを家族で楽しめる「カヤック」も1人1時間あたり2,500円。サップと同じく、マリンシューズは要持参です
- 「Glamping Village SeaGrand」
・住所/長崎県松浦市福島町喜内瀬免1006-2
・営業/チェックイン16:00以降、チェックアウト10:00まで、不定休
・宿泊プラン/
[食事コース付き(1泊)]1人あたり¥17,000~
[素泊まり(1泊)]1人あたり¥11,000~
詳細はコチラ
400枚の水田反射鏡に夕陽が映える「土谷棚田」実は夜景遺産でもある”春秋二毛作”
松浦市を代表する観光名所のひとつが、福島の中西部に位置する「土谷棚田」です。平均傾斜角15度で海岸から標高120mの高さまでせり上がる広さ15ヘクタールほどの棚田は、明治時代から昭和初期にかけて開墾。1999年に「日本の棚田百選」に選ばれると多くの観光客が訪れるようになり、地域の活性化にも貢献しています。
棚田百選の中でもトップクラスの絶景と名高い同所にもっとも注目が集まるのは、毎年4月半ばからGWをはさんで5月初旬までおこなわれる田植えの時期。約400枚の稲田に張られた水が反射鏡になり、玄界灘に落ちゆく夕陽を映して燦然と輝く景色は、壮麗のひと言〈写真・上〉。日が沈むにつれて、オレンジから紫、青、黒へと映す色が変わる”連作アート”を収めようと、全国から写真愛好家やプロカメラマンがこぞって訪れています。
さらに同所には、カメラマンたちを魅了する”第二の顔”が。2003年より美景保全と農家振興の観点から、約2,000本のたいまつを200枚ほどの水田のあぜ道に並べる「土谷棚田の火祭り」が、9月下旬の日曜日に地区住民の自主運営でおこなわれるようになりました。
全国から2,000人ほどのファンを集めた初期の火祭りは、2008年を最後にいったん中断。惜しむ声が高まるなか、2012年に福島町の有志グループが棚田地権者の了承を得てペットボトル内に立てたロウソクに火を灯す現在の”灯籠スタイル”で復活させると、同年に「日本夜景遺産(ライトアップ夜景遺産)」に選ばれました。現在では約3,000本の灯りで棚田全体を幻想的にライトアップしています。
さらに2017年からは、火祭りの翌日から6日間、灯籠をLEDに変えて照らす「棚田ほたる」がスタート。約6,000本のLED灯が、30分ごとにオレンジと青を交互に色変えしながら、日没どきの18時から21時まで棚田をライトアップしています。
火祭り・LEDともに、2020-2021年の2年間は新型コロナウイルス感染拡大防止のため休止を余儀なくされましたが、2022年は期待できそう。同所の絶景写真はインターネットに星の数ほど出回っていますが、土谷棚田に描かれる”春秋二毛作”の天然&人工アートには、生で体感してこそわかる真価があるはず!
冬、降雪後の土谷棚田。周りの島々の雪化粧もあって、幻想的な風景に 春、カメラマンたちが殺到する田植期の土谷棚田も、日中は土の色を映して一面が茶色に 夏、青々と繁った稲波が美しい夕暮れどき。「日本の棚田百選」という冠にうなずく一枚 秋、収穫直前の棚田。青い空と海とのコントラストが眩しい 収穫作業中。上から眺めると高低さを感じない棚田も、目線を1枚1枚に合わせれば、しっかり段差で区切られているのがわかります 「土谷棚田の火祭り」の様子。ロウソクの火が揺らぐことで輪郭がボヤけた灯りになり、いつまでも見ていられる穏やかさ 青色に灯ったLEDがもっとも映えるのは日が沈んだ直後の宵どき。棚田の灯りとグラデーションがかった空、”対岸”のように見える松浦魚市場あたり〈写真左側〉と星鹿半島〈同右側〉の電灯が重なり、ひとつのアート作品が完成します LEDがオレンジ色になる時間帯。下から見上げれば、海景の代わりに満点の星空が撮れるかも!?
- 「土谷棚田」
・住所/長崎県松浦市福島町土谷免
・営業/24時間、年中立ち寄り可
・料金/火祭りのみ「棚田美化協力金」として高校生以上1名¥500
詳細はコチラ
島の最北地「初崎キャンプ場」名物は水平線に夕陽を見送る”チルタイム”
福島の北西端に位置する「初崎海水浴場」は、同島唯一の遊泳用ビーチ。コバルトブルーの海と、海中から生えたようにぽつんと佇む「初崎灯台」の白が印象的な、アーチ状の美しい入り江です。海は遠浅のため、小さいお子さん連れでも◎。さらに近隣には、やぶつばき群生林を散歩するコースが人気の「初崎公園」などの施設もあり、ファミリー旅に向いていることから、別荘地でもあります。
そして、海岸より少し手前の一段高い土地にあるのが「初崎キャンプ場」。フリーテントサイトが36区画あり、駐車場・炊事施設・トイレ・有料シャワー・BBQセットのレンタルといった基礎設備が揃っているうえ、場内はしっかり人の手で整備された平地のため、キャンプ初心者でも安心して楽しめます。
ここでのBBQは、もちろん海の幸がおすすめ。目の前の海で釣るのも一案ですが、島の玄関・福島大橋のすぐ近くにある直売所「とれたて福の島」で地元の海産物を買うことができます。なかでも、同島の名産である車海老が人気高し。キャンプ場とは車で15分ほどの距離のため、買い忘れがあっても大丈夫です。
日中は海水浴や観光を楽しみ、日暮れまでに一夜を明かす準備をしたら、いよいよ大切なひとときの訪れ。キャンプチェアに腰をおろして、夕陽に向き合いましょう。沈みゆくにつれて海に陽光が伸びていき、やがて対岸にある鷹島の稜線にスッと消え、宵闇が広がります。日常の喧騒や昼間のレジャーも忘れ、静かにマインドリセットができる極上の時間。このチルタイムこそ、初崎キャンプ場の一番の名物だといえます。
夜を迎えたら、海鮮BBQに舌鼓を打つもよし、はたまた大切な人とじっくり話をするのもよし。松浦旅を市街地グルメから始めて海キャンプでゆっくり終えるのも、乙なものです。美しい夕陽で心を洗いに、福島まで足を運んでみませんか。
伊万里湾の海はとにかく水がきれい。島々の緑に囲まれていることで”秘密の入り江”感がぐっと高まっています 7月半ば~8月半ばの海水浴場開放期間にはたくさんの遊泳客が訪れます(写真はコロナ禍以前のもの) 「白い灯台が目印!」と各所で案内あるほど近隣のランドマークになっている初崎灯台 テントは入口を夕陽に向かって設置するのが絶対おすすめ。テント内から寝そべって眺めるのも◎ 共同の炊事場。施設がしっかり整備されているので不慣れでも安心して利用できます
- 「初崎キャンプ場」
・住所/松浦市福島町鍋串免1043-1
・営業/毎年4月1日から9月30日まで
[宿泊キャンプ]チェックイン14:00以降、チェックアウト13:00まで
[デイキャンプ]チェックイン10:00以降、チェックアウト15:00まで
・施設利用料/
[宿泊]¥1,500(1区画)
[デイキャンプ]¥500円(1区画)
[シャワー]¥100(1回)
[BBQセットレンタル]¥1,000(1台、炭3㎏つき)
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※価格などの情報は取材時のものです。