北松浦半島
歴史ある秘窯の里で貴重な焼き物体験を
佐賀といえば伊万里焼、有田焼、唐津焼など、古くから陶磁器の産地として有名なところ。なかでも「大川内山」は、江戸時代に佐賀藩(鍋島家)直営の窯が置かれ、徹底した管理のもと、将軍家や諸大名へ献上する高品位の焼き物が作られていました。これらは鍋島と呼ばれ、その伝統を受け継いだのが伊万里焼です。三方を山で囲まれ、山水画を思わせる独特の風景は、まさに”秘窯の里”と呼ぶのにふさわしい景観です。
人が通ると自動的に風鈴が鳴る「めおとしの塔」 登り窯は平成2年に観光用として再現されました
この大川内山には、藩窯で栄えた時代に製陶の秘法を守った関所や陶工の家などが再現された「鍋島藩窯公園」があります。公園内を歩くと古窯跡などの歴史的文化遺産とともに、さまざまな磁器のオブジェが至るところに飾られて、静かな街並みと自然に調和しています。また、伊万里焼の14個の風鈴が音を奏でる「めおとしの塔」や、献上品を焼いた「登り窯」など見どころも多く、清流に沿ったなだらかな坂道は風情たっぷりでのんびりと散策するのにピッタリです。
伊万里焼を実際に見て触ってお買い物ができるのも、大川内山の大きな魅力のひとつ。約30軒もの窯元があり、店舗やギャラリーを併設しているところも多く、ぶらぶらと散策しながら好みの器を探す楽しみも。春には窯元市、夏には風鈴まつり、秋には鍋島藩窯秋祭りが開催され、観光客も多く訪れます。また、陶芸教室やろくろ体験、絵付け体験などを開催している窯元もあり、気軽に焼き物に親しむことができます。
ろくろを回して自分だけのオリジナルの器が作れる
虎仙窯のギャラリー。広々としたスペースで展示・販売 ショーウィンドウに並んだ器たち 思わず手に取ってしまう美しい青磁の器
大川内山のメインストリートである鍋島藩窯坂の途中にある窯元「鍋島虎仙窯」。こちらでは伊万里焼のろくろ体験(要事前予約)ができるとのことなので、橋爪さんがトライしてみることに。「絵を描くのは得意なので絵付けもやってみたかったんですが、ろくろを回すのは初めてなので楽しみです!」と盛り上がります。
教えてくれたのは…
PROFILE
川副隆彦さん/鍋島虎仙窯
鍋島虎仙窯陶主・川副虎隆氏の長男。番頭兼絵師。佐賀県立有田窯業大学校で学び、現在、鍋島虎仙窯にて作陶や絵付けを担当する傍ら、番頭としてろくろ体験でお客様の指導なども手掛ける。現在は、鍋島焼の技術継承は基本としながら、新しい魅力を発信する為に、祖父が取り組んでいた青磁の研究を始め、時代に合わせた「鍋島の価値」を後世に伝えていける取り組みを行っている。
初めてのろくろ体験はみるとやるのでは大違い。難しいけれど楽しい!
ろくろは初めてなので緊張する橋爪アナ まずは先生が見本をみせてくれました みるみる形ができていきます 先生があっという間に完成させたお皿 釉薬をかけて焼いたものがこちらです
ギャラリーの奥に進むと工房があり、完成品の他に、体験のお客さんが作ったばかりの器が棚に置かれていました。それを眺めながら悩んだ末に、橋爪さんはお茶碗を2つ、そして一輪挿しを作ることに決定! まずは先生にお手本を見せてもらうことに。ろくろを自在に操りながら、いとも簡単に粘土から中鉢を作ってしまう川副さん。焼く前からすでに美しい!
力加減が難しい… 形がくずれる前に先生がサポート スポンジを使って形を整えます やや歪んでますが(笑)、まずひとつ完成
初心者はご飯茶碗から始めるほうがいいとのアドバイスにより、まずはひとつめに挑戦。書道を習っていたという橋爪さんは、先生から姿勢がいいと褒められるも、初めての作業におっかなびっくり。柔らかな粘土の感触は手触りが良くて、癒し効果を感じますと橋爪さん。
「左手は添えるだけで、右手で形作っていくイメージで」と指導されますが、なかなか思い通りに成型できずに、何度か先生に手伝ってもらいながら、まずはひとつめを完成。はたから見ているぶんには簡単そうですが、実際にやってみると大違い。コツを掴むのに時間がかかります。
口を細くするのがまた難しい ちょっと離れてチェック! 無事3つ完成です 生まれて初めてのろくろ体験でした!
ふたつめの茶碗を仕上げて、徐々に慣れてきた後に、念願の一輪挿しにチャレンジする橋爪さん。一輪挿しは、高さを出しつつ、ほっそりとしたフォルムにしなければならないため、難易度が高いアイテム。それでもコツを掴んで、なんとかキレイな形に完成させることができました。約1時間で、茶碗をふたつと一輪挿しが出来上がり。仕上がった器は、その後釉薬をかけて焼いて、3週間ほどで手元に送ってもらえるそう。届くまでドキドキです。
そして、ついに出来上がった器が届きました!
こちらが自宅に届いた完成品 世界にひとつだけの器です!
「焼きあがると縮むので大きく作ってくださいと言われたのですが、予想以上に縮んでいて反省しました。そして、苦戦した一輪挿しは湯呑みのよう(笑)。でも、手作りした“世界でひとつだけの青磁”が届いたときは、嬉しさがじわじわと込み上げてきて、器がまるで我が子のように感じました! 今度チャレンジするなら、小皿とメインのおかずを載せるような大皿を作ってみたいです。食卓に並ぶ器が、全部手作りの青磁で揃えられたら素敵ですよね」(橋爪さん)
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撮影/吉澤健太 取材・文/志摩有子